「90歳になって思うこととは」運び屋 とえさんの映画レビュー(感想・評価)
90歳になって思うこととは
沁みる映画だったー
87歳の老人が一人で麻薬の運び屋をしていたという報道記事に着想を得て製作された作品
映画では、90歳の主人公アールが「ただの老人」から「運び屋」になるまでが描かれている
そのアールの姿を見て思う
人は、90歳になった時、何を思うだろうか
クリント・イーストウッドからしたら若輩者の私が思うことは、ただの想像でしかない
しかし、それまでの人生を振り返り、自分が失敗したことを、若い世代にはさせたくないから
「こんなことをしてはいけないよ」と言って諭すのではないかと思う
では、今年、89歳になるクリント・イーストウッドが、この90歳になる運び屋の実話を題材に選んだのは何故だろうか
クリントなりに、この運び屋アールの人生に共感することがあり、自分の人生と重ね合わせた上で「こんな老人になってはいけないよ」というメッセージを込めて製作したかったのではと思う
そのメッセージを私たちに届ける役割を果たしているのが、ブラッドリー・クーパーだ
クリントの弟子とも言われるブラッドリーと、クリントが共演している場面はどれも貴重なものであり、その中で、クリントは若者世代へのメッセージを込めたセリフをしゃべっている
アールは、これまでどんな生活を送り、何を後悔し、若い世代に何を伝えたいのか
もっと具体的に言えば、彼は「人生で最も大切にすべきことは何か」を伝えたいのだ
それは、アールだけのものでなく、クリント自身の言葉でもあるのだ
私の心の中では素直に認めたくないけれど、
クリントはアールという役柄を通じて、ブラッドリー・クーパー世代へ伝言を遺しているのだろうと思った
ブラッドリーは、クリントからの遺言を託される重要な役割を果たしている
世界中の人たちが、クリントにはもっと作品を作って欲しいと願っているけれど
もうすぐ90歳を迎える彼は、遺すべき言葉を選んでいるのだ
そう思ったら、後半、この映画の中でクリントの放つ言葉の一つ一つが心に沁みて、切なくなり、映画が終わると涙が出てしまった
惨めで、孤独な老人になりたくないと思ったら、どうすべきなのか
そのクリントからのメッセージをしっかりと受け止めたいと思った作品だった