「映画界のレジェンドここにあり!」運び屋 ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
映画界のレジェンドここにあり!
なんて深い映画なんでしょう。
これは、麻薬密売を行う運び屋のアクション映画ではなかった。
一人の老人の人生を描いた、愛情深いヒューマン映画でした。
この映画を作ろうと思ったきっかけは、NYタイムズマガジンで見つけた一つの記事だそうです。
この記事を見たクリントイーストウッド氏は、彼の人生を自分の人生に置き換えて、一つの作品を作り上げました。
百合の栽培に人生をかけた男が、事業に失敗し、お金を稼ぐために麻薬密売という犯罪に手を出してしまうところから、この話は始まるのですが…。
高齢のヨボヨボな老人と見せかけて油断させ、何百キロもの麻薬を黒いトラック一つで何往復もするというのは、なかなか大胆な犯罪行為。
今にも死にそうな90歳近い老人が、何百キロもの麻薬を運んでいるなんて誰が予想できるでしょう…。
その想像もつかないような発想を逆手にとって、大胆不敵に麻薬を運びに運び続ける姿は天晴の一言!
そんな彼の人生は、ひたすら仕事仕事、仕事に邁進する日々。
家族のことを顧みず、仕事ばかりの人生を歩んできたことに、後悔の念を抱きながら余生を重ねてきた男だったのです。
この男の生き方は、まさにクリントイーストウッドの人生そのもののように映りました。
若い頃から映画、映画、映画と共に歩んできた人生。
二人の女性と結婚しますが離婚し、映画監督として俳優として、業界人のレジェンドとして君臨し続けてきた彼。
普通の人生とは程遠い、何者にも縛られない、着の身着のままの人生を歩んでばかりいたせいで、彼は娘や息子との関係も円満とはいかなかったよう…。
このことを後悔し続けた結果、その懺悔の意味も込めてこの映画を手掛けたのだとしたら、なんとも考え深いものがあります。
映画では、最後に妻のそばに寄り添い、最後の最後に家族との掛け替えのない時間を過ごす姿が印象的でした。
実際のクリントイーストウッド氏も、この映画をきっかけに家族の大切さを改めて振り返りたかったのかもしれませんね。
この映画は、前半の自由でアバンギャルドな生活に笑いつつ、後半で家族の愛の素晴らしさを感じるという…。
一つの作品から、笑いと感動という二つの感情が湧き上がりました!
『グラン・トリノ』のような、無口で気難しいクリントイーストウッド氏も好きですが、女好きなムッツリスケベな老人の姿も素敵(^^)
90歳を迎えようとしている彼ですが、この映画を見る限り、まだまだ映画の制作活動は止まりそうにありません…。
彼はいつまで、映画の世界に君臨し続けるのか?
そして主役を張れるのはいつまでなのか?
まだまだ、彼の人生に期待したくなる映画でした。
最後に、今回試写会に映画評論家の町山智浩さんが登場してくださいました。
彼は実際にクリントイーストウッド氏と対談したという、凄い人なのです!
運び屋の映画では、90歳近い彼が実際にトラックの運転をしていたという話。
耳が遠いにもかかわらず、補聴器を使わずに会話をしていた。
まだまだ現役で女性とヤリまくっている⁈
などなど、丸秘話が炸裂していました!
この機会に、貴重な話を色々と聞くことができたことは大変光栄です!
なかな体験できない貴重な時間をどうもありがとうございました(^^)