「 まず最初に、私は、この映画を劇場で3度見た。 しかし、見る回数を...」機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ 某O次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
まず最初に、私は、この映画を劇場で3度見た。 しかし、見る回数を...
まず最初に、私は、この映画を劇場で3度見た。 しかし、見る回数を重ねるごとに眠気が起き、あくびの回数が増えた。
この映画に私が求めた条件は、2つ。
一つは、同じガンダム映画プロローグ的作品ならば「機動戦士ガンダムF91」より上であること。 30年前の映画より劣るなんて事は、ありえない。
二つ目は、この作品が映像化の決定がなされた時点で、原作小説3冊を読み返した時、この内容を、そのままアニメにしても面白くないので、アニメの娯楽作品として、どうアレンジするかという事。
二つ目の条件から入る。
元々、富野由悠季氏が、この「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」という小説を書いたのは、アニメ化はしないという条件でカドカワから依頼を受けた(背表紙には『小説でしか読めないガンダム・誕生』とハッキリ書いてある)。 つまり、当時のガンダムという娯楽アニメとして商業をするという、しがらみから解放されて自由に書くとした物で、それが時を経てアニメ化したなら、娯楽作品とアレンジすべきだが、ほとんどの内容が、そのまま映像化された。 富野氏は、試写を見た後「原作に忠実すぎる!」と、逆に怒ったらしい。
富野由悠季氏の原作小説には、こういう会話が書いてある。 「逆だよ。 愛している、愛されたなんで言い方のほうが、よほど欺瞞的だ」 「そうか…それもそうですね」。 富野氏は「人と世界は『愛』が一番大事」という「恋愛至上主義」が、大嫌い。 よってこの様な文章が生まれた。 富野氏の小説には、しばしばそういった描写が見られる。 富野氏の小説を忠実に映像化するなら、この「愛が全ての否定」も忠実に表現して欲しかった。 中途半端な忠実化だから、余計この作品への評価が下がった。
アニメは娯楽としてある物。 中には商業的な数字を無視して、自分の作りたい文化的作品を作ってもいいとする作家も居るだろうが 「娯楽アニメ」として続いてきた「ガンダム」は違う。 全体的にロボットアクションシーンが少ない。 ガンダム作品は、お約束として主役ガンダムのカッコいいバトルシーン中心に描く物として宿命付けられた。 だが、この作品は主役ガンダムの活躍シーンが余りに少なく、ガチのバトルも、ほとんど書いていない。
この「閃光のハサウェイ」という作品が「映像化不能」とされていたのは、メインのガンダム「クスィー」と「ペーネロペー」のデザインは線と面が多く、30年前のアニメ技術では動かせなかったというのも、理由の一つ。 それが3DCGなどの技術の発展があって、アニメーションとして動かせる様になった。 だが、せっかくのそれが、映画の中で充分に活かされていない。 「クスィー」と「ペーネロペー」は、初のミノフスキークラフト搭載で、重力下で自由に空を飛ぶ事ができるという設定を、活かしきっていない。
原作小説では、ペーネロペーは、あっさり撃墜されるが、初めて映画を見ていた時、その落とされる場面になったとき、心の中で「落ちるなよ~…まだ落ちるなよ~…」と願ったが、次の瞬間に撃墜されで、全てのアクションが終わった時に、心の中で「ガクッ」っと何かが落ちた。
全編、人間ドラマの描写が多く、ロボットアクションが少な過ぎる。 ロボットを描かなくて良いなら、なぜ「ガンダム作品のアニメ」として作ったのか? 「人間ドラマ」はレベルが上で「ロボットアクション」は下等でレベルが低いという議論ではない。 私は「人間ドラマの名作」より「ガンダムとしての娯楽作品」を期待したのだ。
そもそも「人間ドラマ」はレベルが上で「ロボットアクション」はレベルが下と、誰が決めたのか? ロボット・アニメを多く作り出したサンライズが、その主張をするのはおかしい。
この「ガンダムとしての娯楽作品」では「機動戦士ガンダムNT」の方が、娯楽として楽しめた。 これは、最初に書き出した第一の条件「機動戦士ガンダムF91」より上かの議論にも繋がる。 F91の方が、新しい主役ガンダムの活躍をメインで描いていて、自分の中では今回の「閃光のハサウェイ」より「F91」の方が上であった。
作品のテーマについて。
スタッフは「テロリズム」や「地球環境」の問題をメインに描きたかったというが「地球環境」については、この時代のPMなどの大気汚染はどうなっているのか? 西暦の20世紀から排出されたプラスチックごみは、宇宙世紀での地球の海でも漂っているかなどの事が、描かれていない。
「逆襲のシャア」の最大の失敗は、地球環境汚染を巡る戦いなのに、汚染された地球を、1カットも描かなかった事。 汚染のカットがなく、アムロとシャアの言葉の論争だけが虚しく宇宙に響いていた。 なぜ地球環境汚染テーマのガンダムは、汚染された地球の絵を描かないのか、私は不思議でならない。 この映画1本見ただけで「テロリズム」と「地球環境」の問題が、多く勉強になるとも思えない。
主人公が「テロを起こす」と決めた時点で、それは自分達の主義主張と関係のない、無実の一般市民の命を奪う事を覚悟しての行動の筈だ。 その経緯に至った主人公の心理描写が、ほとんと描かれていなし。
今回は、宇宙世紀ガンダムの久々の新作、しかもオリジナル映画である為、わざわざ劇場に足を運んで見たが、2作目・3作目も今回と同じ様な作りであった場合、劇場に行って見るか?レンタルDVDだけで済ますか? …今回と同じ事が続くなら、前者として行動する確率は、かなり低いと思われる…
それでも★2にしたのは、澤野弘之さんが今回も神曲を作ってくれたから。 これが他の作曲家だったら、何の容赦もなく★1を付ける!!