「魂で結びついた二人の凛とした思想の物語。」金子文子と朴烈(パクヨル) マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
魂で結びついた二人の凛とした思想の物語。
BS番組の映画紹介で紹介されてから、俄然興味が湧き、鑑賞しました。
当初は上映2日後に鑑賞予定でしたが、満席の為断念。
翌日に鑑賞予約をしたら、平日にも関わらずかなり席も埋まってましたがサービスデーで1,100円でした♪
で、感想はと言うと、面白いと言うか、鮮烈な凄い作品ですが、なかなか難しいです。
当時の時代背景や思想、民族背景を理解しておかないとついて行けない部分や一部分の見方に振り回される部分も多々あります。
ですが、それでも自身の思想と民族の誇り、理不尽に虐げられる国に対しての怒りに命を賭しても毅然とする態度には凛とした美しさを感じました。
また過酷な運命ながらも何処かで悟りきった様な振る舞いにコミカルな感じもあり、見応えは十二分にあります。
観ている途中で「シド アンドナンシー」や「ナチュラル・ボーン・キラーズ」を思い出しました。
金子文子役のチェ・ヒソさんの振る舞いや仕草がチャーミングで、法廷の場での眼鏡を掛けた出で立ちもコスプレチックでなんか萌えますw
ストーリーは詩に感銘を受けた文子が朴烈の元に押しかけ女房をして、同志として恋人として、動乱の時代を駆け抜ける訳ですが、関東大震災から投獄されるまでの展開が早くて、獄中のシーンが結構長いです。
バランスが悪い感じもしますが、不法逮捕されるまでの朴烈は過激犯的な描写が多くて、ちょっと感情移入がしづらい分、獄中から何故大罪人として死刑になる事を分かっていながらも不利な言動行動を取ったかと言うのが理解するにはこれだけの時間が必要となるのは理解出来ます。
また、判事や担当刑務官とのやりとりも互いの立場に殉じながらも理解していくのが何処かコメディな感じさせながらもなんか良いです。
ただ、多くの日本人を韓国の方が演じているので、文子に比べてかなり片言の日本語になってるのが惜しいです。
韓国映画であるからなのか、当時の日本の背景が民族差別が横行して、大理不尽帝国に映っています。ただこれが誇張なのか、真実なのかは勉強不足な為、まだまだ十二分に理解と認識が足りない所がありますが、それでもこの様な事件が過去にあって、この二人が居た事は事実な訳です。
互いの生い立ちのいろんな体験で信じられない物と信じられる物が生まれ、その中で信じられる物の美しさが鮮烈な想いに変わり、二人が共に強い想いで結ばれるのですが、あの一緒に写った写真からも分かる様に何処か達観してるんですよね。
儚いと言えば儚いですが、強烈な純愛です。
法廷のシーンも見応えありますし、文子のその後にはかなりショックですが、個人的には観て良かったと思います。
いろんな見解がある中、それぞれの立場からの想いを発しているので観る人を選ぶ作品ではありますが、印象的だったのは朴が劇中に発した「この国は嫌いだが、この国の民衆は嫌いではない」言った台詞は時代が悪かったと言う一言では片付けられないとしても、翻弄されるのは常に庶民だと言う事。
上映館がまだ圧倒的に少ないですが、観る機会と興味があれば、観ていろいろと考える事と余韻に浸れる作品かと思います。