「奇跡のような作品」ばるぼら minami98さんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡のような作品
孤独な作家とホームレスの少女、または、作家とミューズの究極の愛と捉えても、孤独な男のすべて幻想と捉えても、生きているからこそ実体のない名声を求め、愛が執着、狂気に変わる人間の愚かしさ、いたいけさ、切なさに、示唆を受け止めても、そのすべてが胸に迫ってくる。
美しく汚いこの世界、でも、すべては誰にとっても流れ去るという虚無を、この幻想的で完成度の高い作品に仕上げているのが信じられない。間延びに思う所が一つもない。
全体を覆っている雰囲気が手塚治虫的世界であることも、実の息子の手塚眞監督が実写化した作品として意味があり、そのレトロ感と現代との融合もこれほどうまくお洒落にできているのは、おそらく出演者スタッフすべての実力魅力が結集されたがゆえで、本当に奇跡のような作品だと思う。
お金のかかった大作映画ではないこの作品ほど、映画とは、脚本、演出、撮影、編集、役者、音楽、美術、衣装等の総合芸術なんだと、新鮮に実感として感じられる作品、私の中では今ない。
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