「怪獣大相撲 〜夏巡業2021〜」ゴジラvsコング ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣大相撲 〜夏巡業2021〜
『キングコング対ゴジラ』以来、59年ぶり2度目の顔合わせとなった二大怪獣。土俵も空母から香港まで多彩に広げて東西の横綱相撲を展開。果てにはあの有名力士が突如と土俵を割って入ってくる初切もあり、怪獣大相撲夏巡業としては楽しめる。
“夏巡業”と書いたのには理由がある。それは本作に“本場所”感が乏しいことだ。せっかくガチンコの横綱対決を楽しみにして観に行ったのに、途中から地底探検や陰謀論など本質でないところに時間を割き、徐々に怪獣相撲の勝敗がどうなろうと来場所の番付や進退に影響が出ないエキシビションマッチになってくる空気が漂ってくる。その結果、結びの一番の取り組みにどうも熱が入らなくなってしまったのだ(前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は綱取りのかかった本場所だった)。
賛否があるだろうが、コングに過度な感情を持たせた点は私には裏目に見えた。怪獣たちに感情を持たせることでモンスターたちの個性が露わになり、自然の脅威=モンスターの怖さが多分に薄らいでしまったように思える。そして、もう一つは物語や世界観のリアリティーの無さ。怪獣たちの存在自体が非現実的であるのだから、人間ドラマのパートや世界観は現実に即した方が良いように思える。地球空洞説などはそのテーマだけで別の映画ができてしまうほどで、もはやギャレス版ゴジラと地続きの世界とは言い難く、ユニバースものとはいえ世界観のバランスを欠いてしまったように見えるのだ。
では、巡業相撲では不満か?と聞かれれば、それはそれで楽しめる。映像の迫力は満点だし、特段、日本の横綱ゴジラが空母を破壊しながら土俵に向かう花道行進には歓声を上げそうになるほどワクワクした。これはできるだけ大きなスクリーンで、できればIMAXなどの溜席で夏巡業の横綱相撲をご鑑賞、いやご観戦頂きたい。