「強い描写を意識しすぎて土台が緩め、キャストが強いだけに設定に限界を感じる」惡の華 かわちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
強い描写を意識しすぎて土台が緩め、キャストが強いだけに設定に限界を感じる
バックボーンが見えてこないのが残念。なぜ彼が、衝動に駆られたのかが入っていないため、どうも置いてかれるような印象に。「だれでもない自分」を追い求める様は確かに理解できるが、いまいちその背景を描ききれていないように映った。
クラスの人気者の体操着を嗅ぎ、それを見られたことで始まる服従の関係。次第に突き動かされるように非行していくが、どうも掴めない。「なぜ?」なのだ。腹を括った理由はどこにあるのか。分からなくなりつつも、衝撃たる描写でねじ伏せる。思春期でもそんなことあるか?的な、行きすぎた行動が続く。そんな序盤の鬱陶しさを払い除けてくれたのが、秋田汐梨の演技。クラスのマドンナ的存在でありながら、醜く落ちてく春日にハマっていく。中学生の時にはあどけなさを、高校生のときには大人らしさを使い分けるように躍動する彼女は結構びっくり。むしろ彼女しか中学生に見えなかったくらい。キャストがそれなりの存在感を放っていただけにちょっと内容の構造が残念。
私はピカソの絵を見たかったのであって、ラッセンが見たかったのではない。思春期の混沌とした感情をテーマにしておきながら、その描写を大胆に描きすぎたことで、結局は後悔を美化しているだけではないか。惡の華がもたらした意味すらあんまり感じなかっただけに残念。私欲が垣間見えるような映画だった。
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