劇場公開日 2019年9月27日

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「不思議な力で揺さぶられます」惡の華 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5不思議な力で揺さぶられます

2019年9月28日
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難しい

いったい何を見せられたんでしょうか。開始早々にわけがわからない展開に頭がついていけなくなりそうでした。思春期特有の行動や思考に共感できる部分は多かったものの、その一方で、仲村と春日の行動には全く理解できないところも多かったです。

だからといって物語に入り込めないかというと、むしろ逆。不穏な空気の中で展開する二人の物語に、すごい力でぐいぐい引き込まれるようでした。淫靡な背徳感とでもいうのか、自分でもよくわからないような不思議な感覚でした。

作品全体に漂うのは、多かれ少なかれ誰もが思春期に味わったことのあるような閉塞感と、それに伴う不安、恐怖、焦燥、衝動…。そして、その感情が他者に向かって暴言や暴力や破壊という形で表れたり、自己に向かって自己嫌悪や自己否定という形で表れたり…。そうやって自分ととことん向き合って、自分をさらけ出すことでしか、本当の自分を認められず、自分の人生を歩んでいくことができないのかもしれない…と訴えかけてくるようでした。春日にとって、それに気づかせてくれたのが仲村だったのではないでしょうか。見間違いかも知れませんが、ラストの電車の窓に「ありがとう」の文字が映っていたような…。

主演の伊藤健太郎くんと玉城ティナさんはとても中学生には見えませんでしたが、二人とも役柄がよくハマった熱演でした。とくに玉城ティナさんは怪演ともいうべき変態ぶりで、得体の知れない魅力たっぷりでした。この二人に徐々にペースをかき乱される佐伯役の秋田汐梨さんも、体当たりの演技を見せてくれて今後が楽しみです。

本作を鑑賞して、原作とボードレールの「悪の華」に興味を持ったので、機会があれば読んでみたいと思います。たとえ読んでからもう一度鑑賞したとしても、本作を理解するのは難しいかも知れませんが。

おじゃる