「今まさに子育てを頑張っている親たちへのエール!」映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
今まさに子育てを頑張っている親たちへのエール!
タイトルからしててっきり「ひろし映画」かと思いきや、この映画はもう「みさえ映画」。みさえがとにかく格好いい映画だった!
囚われの身となったひろしを救出するため、みさえがヒーローよろしく子どもたちを連れて冒険に出る。背負っていた荷物の重さや、しんのすけに揶揄される二の腕の逞しさに、みさえの家族への愛がさりげなく示唆される(しかし少しも説明的ではない)。母としての責任、妻としての葛藤、人間としての生き様。全てを担ったみさえの姿はまさしく家族愛の権化。同行するトレジャーハンターのジュンコに家族愛を問われる質問をされ(彼女は独身で現実主義者なのかもしれない)、大きくため息をついた後「その話今じゃなきゃダメ?」とだけ答えるみさえ。そしてそれ以上をあえて語らない物語。でもそのみさえの回答だけですべてが伝わる崇高さ。ちょっと褒め過ぎでしょうか?でも今回は大いに褒めたい!
さりげなく描かれていることだけれど、従来の価値観なら女性であるみさえが囚われ、男性であるひろしが救出のための冒険に出ているところだろう。しかし「クレしん」は基本はおふざけをしながらも実はしっかり社会を見ている。押しつけがましくなく社会を反映する。決してディスるわけではいが、今年公開のドラえもん映画で未だにしずかちゃんに病人の看病をさせ、男子だけで冒険に出ていく展開があったのに密かな違和感を覚えていたことを思い出した。私はこの映画のみさえは一つの女性のヒーロー像だと思うし「ワンダーウーマン」より遥かに英雄だと思う。
勿論ひろしの側も、父としての責任、夫としての葛藤、人間としての生き様がしっかり語られており、みさえの生き様と併せて「子を持つ親」としての物語に昇華していく。この映画、子どもたちに向けてというよりも、毎日一生懸命子育てを頑張っている親御さんに向けてのエールみたいだと思った。もちろん男性がみさえに共感してもいい。女性がひろしに共鳴してもいい。その役割は夫婦それぞれに、子どものために家族のために日々頑張っている人ほど、この映画はグッとくるのではないだろうか。あいにく私には子供がいないが、それでも何度か目頭が熱くなった。というか、子どもを持たない私に、子どもを育て家族を養う覚悟をまざまざと見せつけられたような感覚になった。正直、野原一家の愛の深さに、単身者の私は完全に打ちのめされてしまった。
メインのストーリーは、みさえを中心にして繰り広げられる冒険の旅。次に何が起こるか分からない冒険の旅はアトラクションのように楽しく、ツッコミどころ満載でハチャメチャなことばかりが非常に面白く、シンプルにワクワクしながら観た。バカバカしいことこの上ない(誉め言葉)。
今年のクレしん映画は、あえて子供をどこかに預け、夫婦ふたりで観に行くのもいいのではないか?と思った。
この映画が「毎日よく頑張ってるね」と励ましてくれるかのようだ。