「22年目にして知る父の愛情」22年目の記憶 とえさんの映画レビュー(感想・評価)
22年目にして知る父の愛情
心温まる良い映画だったわー
1972年に韓国と北朝鮮の南北首脳会談に向けて、リハーサルが行われたという報道記事に着想を得て作られた作品
1972年、韓国が行ったオーディションで、金日成に選ばれた売れない俳優のお父さん(ソル・ギョング)は、その日から、南北首脳会談のリハーサルに向けて、役作りを始める
やがてお父さんは、自分が金日成本人だと思いこむようになり、息子は、そんな困ったお父さんに振り回されるようになる
しかし、それはお父さんが息子のために受けた仕事だった
シングルファーザーのお父さんは、息子に尊敬される俳優になりたいと思っていた
きっと、世のお父さんの多くが、そう思うように、息子が学校でクラスメイトに自慢できるような父親になりたいと必死だったのだ
しかし、現実はそうもいかず、いつまでも、売れない役者のままだった
そんなお父さんに千載一遇のチャンスがやってくる
それが、大統領の前で、金日成のフリをするという仕事だったのだ
その役を演じるために、金日成の喋り方、クセ、考え方をたたきこんで、金日成になりきっていく
しかし、その結果、息子の心はお父さんから離れていく
小学生の息子は、父親の愛情を欲しがっていたのだ
しかし、お父さんは、金日成を演じることに夢中になるあまり、息子の存在すらも忘れてのめり込んでしまっていたからだった
それ以来、息子はそんな父親のことなど捨てたつもりでいたのだが、
22年後の1994年
息子(パク・ヘイル)は父と再会する
息子もまた、子供を持つ年になって、ようやく、その頃の父の気持ちを理解するようになる
しかし、息子の気持ちもよくわかる
なんとも、困ったお父さんなのだ
自分は、金日成だと思いこみ、政府からアカだと言われ、所構わず、共産主義の素晴らしさを説き始める
そんなお父さんのことを理解しろと言われても、難しいだろう
しかしこれは、
お父さんと息子だからこそ、
より切なくなる話だと思った
息子にカッコいいところを見せたいお父さんと、誰よりも強くてカッコいいお父さんでいて欲しい息子
それは、互いに愛し合っているからこそだけれど、二人とも、素直に愛情表現をすることができず、反発し合ってしまう
そんな二人の心のうちが痛いほど分かるからこそ、観ているこちらは、すごくじれったいし、
だけど、微笑ましい
そして、金日成になりきるお父さんを、ソル・ギョングが演じているから、とても真実味がある話になっていると思った
ソル・ギョングこそ、おじいちゃんになって痴呆症になっても、演技をしていそうな俳優ナンバー1だからだ
優しいけど、ダメ男のお父さんが、少しずつ金日成へと変化していく過程の自然さは、まさに、ソル・ギョングだからこその演技だった
私も、親と暮らしていて、たまにキツイことを言ってしまうことがある
それは、相手が家族だからこそ、甘えてしうからだけれど、この映画を観て、そんな自分を「猛省」した。
もっと優しくしてあげないといけないなぁと思った
どんなお父さんでも、それがたとえ独裁者でも、子供にとっては、最高のお父さんなのだ