「なぜ笑えるのか」岬の兄妹 惟朔さんの映画レビュー(感想・評価)
なぜ笑えるのか
ある港町で自閉症の妹真理子と暮らしている兄の良夫。
序盤から真理子は外を飛び出し、知らないおっさんに犯されて金銭を入れられる。
一方、良夫は足を悪いことを理由に仕事をクビにされてしまう。
妹真理子はお腹が空きすぎてテッシュを食べちゃう、それに良夫は怒るも、ふと食べてみると「おっイケるじゃん…」
という場面。
文章で表しただけでも壮絶で悲惨な状況下どこか可笑しみを感じさせるのはなぜ?
それは電気も止めれられて食べ物もなく、風呂にも入れず、ホームレスにはゴミ飯を取られるわと良いとこなしの兄妹はそうした絶望的環境にいる中においてそれでも「生」を諦めないからだ。
言いかえれば、がむしゃらに生きる人間てのはある種笑えるのだ
それは嘲笑的な笑いではなく羨望的な笑いに近い。
この「羨望的な笑い」とは、彼らがオーディエンスの私たちよりはるかに「生」に固執的であるので、私たちが彼らより「生」に対する貪欲さが劣ることを認識し彼らを仰ぐに近い笑いが生じることである。
つまりあの兄妹は私たちよりはるかに「生」において優っているのである!
コーラを飲みながらポテチを頬張り、ドラマを観ている私たちより彼らの「生」が曲がりなりにも真っ直ぐであるのがなんとも不思議な光景にも思われる。
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