「かなりの快作」僕たちは希望という名の列車に乗った CBさんの映画レビュー(感想・評価)
かなりの快作
東ドイツの上級学校を舞台に、潜在的に自由を求める生徒たちの「黙祷」というほんのちょっとの行動を、当局が重大視して犯人探しをする中で、生徒たちはどうするか、どうなるか、という話。
オープニングは墓参りの名目で西ドイツへ映画を観に行く二人で始まり、前半は東の抑圧的な体制と、その中での若者らしい自由を求める気持ちの高まり、黙祷の実施までが勢いよく軽快に展開する。
一方、後半は問題視された「黙祷」の犯人探しのためにだんだん大物が現れてきて、誰が首謀者かを証言しない限り、全員が放校されるとなっていく厳しい取り調べの緊張感、抑圧感、どうにもならない感が半端ない。
実話だけに、オチはすっきりとかびっくりといったものではなく、最後は静かに終わっていくのだが、この前半と後半の対比が見事で、不満はない。
主人公テオの父が、バイク(サイドカー)にテオと二人の弟を乗せて学校まで送って来るシーンが、前半と終盤に一度ずつ同じアングルで現れる。ほとんど同じシーンなのに、前半の幸せ感と終盤の緊迫感、この対比は半端ない。うまいものだなあ。
生徒たちを主人公にしたおかげで、厳しい拷問などのシーンはなく、日常的な抑圧感が体験できる。「上級学校を卒業できれば指導者側、そうでなければ労働者側」という明確な貧富のルート。けっこう重い。
ドイツ人の若者たちは、いずれも顔つきが魅力的。この点だけは、アーリア人至上主義を掲げたくなった気持ちがわかるかな(笑)
オチなくても映画を楽しめる人、必見です!
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