劇場公開日 2019年5月17日

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「僕たちの今とは異なる青春」僕たちは希望という名の列車に乗った ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5僕たちの今とは異なる青春

2019年5月19日
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ソ連では恐怖政治を続けていたスターリンが死に、その後のフルシチョフがやや融和的だったことも影響して、ハンガリーでは民族の自立や、人々の自由を求める運動が起きたのだろう。だが、フルシチョフはこの動乱の鎮圧のために、ソ連軍を送り込む。
こうした最中の東ドイツの若者の葛藤や勇気の物語だ。

高校時代に、自分にこんな勇気があったかと問われると、ノーだ。
言論の自由とか、国民主権とか、やっと認識し始めた頃で、その意味や、その有り難みさえ、ちゃんと理解しようとしていたか考えると、恥ずかしながら怪しい気がする。
マルクスやレーニンが唱えた共産主義は、本来は労働者のためのものだったはずだ。だが、映画では、労働階級は、格差の下層のように語られていて、この若者はこうした矛盾にも気がついていたのだ。

言論や表現の弾圧は恐ろしい。日本でも大戦中には言論や表現を弾圧するために官憲が配置されていた。
僕たちは、歴史から何を学ぶべきだろうか。
この若者たちの葛藤や、無謀とも言える勇気から、何を学べるだろうか。

残念なことに、こうした自由を求める空気が共産党政府の危機感を募らせることになり、ベルリンでは東西を隔てる壁が、その後築かれることになる。
そして、約30年間、それは東西ベルリンの壁にとどまらず、鉄のカーテンとして世界を東西に分断する。
結局、ソ連共産主義は崩壊し、ベルリンの壁も取り壊されたが、今、世界はまた分断主義という壁に向き合おうとしている。

世界には人々を監視し、人権を蔑ろにし、言論や表現の自由を制限し、信教による差別を厭わない国家もある。
一方で、そこで稼げるのであれば、政治体制と、利益は別という資本主義者も存在する。
僕たちは、この若者たちから何を学べるだろうか。

この若者たちは、卒業試験をパスして、その後はどうしてるのだろうか。
ひとつだけ確実に言えるのは、きっと自分たちの青春に誇りを持っているに違いないことだ。

ワンコ