「韓国人女性の話に翻案したことで魅力的で素敵な映画になった」デッドエンドの思い出 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国人女性の話に翻案したことで魅力的で素敵な映画になった
"dead end=行き止まり(袋小路)"の思い出・・・吉本ばなな原作と知るまでは、敬遠されそうな、あまりにも息苦しいタイトル。
もともとは吉本ばななの短編集(5話収録)のタイトル作品。著者はあとがきにおいて、「自分のいちばん苦手でつらいことを書いていて」、「つらく切ないラブストーリーばかりです」と記しているが、実際はとても爽やかな気分を得られる、再出発の作品である。
原作のファンだった韓国の映画プロデューサーであるイ・ウンギョンの発案で、舞台を名古屋に設定し、韓国人の女性と、ゲストハウスの日本人オーナーの話に置き換えて、翻案したのが成功している。ここがこの映画の最大の魅力。
日本で働く、遠距離恋愛中の婚約者テギュに会うため、韓国から名古屋へやって来たユミ。しかし彼のアパートには、見知らぬ日本人女性の姿があった。しかも結婚するという衝撃的な宣告。
前半はこんなに切ない失恋映画はあるかと思うくらい。ユミの行動や家族との電話のようすに揺さぶられる。互いのSNSをフォローしていることで知る事実など、理にかなっていて、とても感心する。
あまりの傷心に、帰国の意欲もなくなっユミは、そのまま名古屋にとどまる。たどり着いたゲストハウスは、路地のドン詰まりにあり、名前は"エンドポイント"(原作では"袋小路"という喫茶店)。
オーナーの西山は不思議な魅力を持ち、常連客たちに慕われている。ゲストハウスの他の宿泊客との国際的な会話があったり、地元名古屋の人々との交流で、ユミの心は徐々に癒やされていく。
主人公ユミを韓国のガールズグループ、"少女時代"のスヨンが演じ、日本人オーナー西山役には、名古屋を活動拠点とするボーイズグループBOYS AND MENの田中俊介が選ばれた。日韓共同製作で、演出を韓国出身の女性監督チェ・ヒョニョンが務めた。
スヨンのキャスティングの理由は、"日本語が上手い"ということらしいが、そうでもない。むしろ、日本語勉強中の韓国人という設定に合わせているだけかも知れない。
同じアイドル出身女優では、"KARA"の元メンバー、知英(ジヨン)の日本語のほうが信じられないくらいペラペラである。
失恋から立ち直り、新しい人生を始めていく、素敵な映画である。
(2019/2/16/ユナイテッドシネマ アクアシティお台場/シネスコ/日本語翻訳:北村裕美)