劇場公開日 2019年6月15日

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「ギターアンプの箱鳴りが印象的な『レディ・バード』ミーツ『卒業』」さよなら、退屈なレオニー よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ギターアンプの箱鳴りが印象的な『レディ・バード』ミーツ『卒業』

2019年7月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

レオニーはケベックの海辺の町に暮らす17歳。高校卒業を目前に控えているが母とも母の再婚相手ともうまくいかず悶々とした日々を送っている。実の父親が彼女の心の支えだったがワケあって今は遠い町で暮らしている。そんな折町のダイナーで見かけたダサいネルシャツの男スティーブを友人とからかうが、なんとなく彼に興味を惹かれたレオニーは彼がギタリストだと知りギターレッスンを受けることにする。年老いた母と二人暮らしのスティーブの自宅に通ってレッスンを続けながら彼に少しずつ心を開き始めるレオニーだったが、久しぶりに帰郷した父を巡って自分の知らなかった事実が明らかになり、慎ましやかな平穏が揺らぎ始める。

なんとなく『レディ・バード』を彷彿とさせるプロットですが、レオニーには彼女のような猪突猛進さがない分より身近で等身大のドラマになっています。作品トーンは随分異なりますが、主人公が抱える虚無感、親の無理解、友人達との距離感といったモヤモヤを何度もバスに乗ってリセットする様と併せて『卒業』に似た余韻も感じました。原題は”蛍の消失”というフランス語だったのでどんな意味が込められているのかが気になっていましたが、それが物語とどう繋がっていくのかが本作の肝だと思います。細かいところですがリアルだなと思ったのはスティーブの自宅で鳴っているギターの音。VOXアンプの箱鳴りが家の中に壁伝いで響いているさりげない臨場感にグッときました。

よね