響け!情熱のムリダンガムのレビュー・感想・評価
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伝統と情熱との相克を描いた傑作!
ムリダンガム、全く知らなかったが、インドの伝統的な打楽器とのこと。
面白いのは、弾ける資格のある人が限られているということだ。大衆的な楽器ではない。日本でいう雅楽?の楽器みたいなものだろうか?
そこにインドの身分制度が絡んでくることで、この物語はたいへん奥深いものになっている。
主人公はどうやら差別されている階層の出で、ムリダンガムを作る職人の息子でありながら、それを人前で演奏することは許されていない。
しかし、主人公は持ち前の熱い気持ちと誠実さでその壁を乗り越えていこうとする。
インド社会の複雑さを全く理解していなかった自分のような人間には、それ自体がとても興味深い筋書きで、生活のさまざまな場面で差別に直面する主人公のような人たちがいることに、感じいるものがあった。
しかも、主人公が憧れるムリダンガムは、自分が差別されることになった、その同じ伝統と歴史が育んできたものではないか。その両者の相克と解放を、深刻になりすぎずあくまでライトに描いているところが、この映画の素晴らしさだと思う。
普段あんまりインド映画見ないのだけど、インド自体に俄然興味が湧いたのも、この映画を観てよかったところです。
(余談)
主人公とヒロインを結びつける場面には「血液」と「水」が出てくる。
出会いのきっかけは、主人公の流血騒ぎで、ヒロインの女性は血まみれになった主人公の頭を縫う。
二人が再会するきっかけも、献血。
また、初めてキスする直前の場面では、頭を冷やせと言われて、主人公は水をかけられる。
劇中でムリダンガムの作り方が語られるシーンがあるが、3種類の動物の皮と、木の根元の幹が材料らしい。
動物の皮が必要ということは、そこでは必ず「血」が流れているはずで、木を育てるには「水」がいる。
偶然かもしれないが、まるで一緒にムリダンガムを作り上げるように、二人が結ばれていくようにも思えて、ますます面白かったです。
世界のどこにでもリズムはある
TIFFにて鑑賞。
南インドの映画。
ムリダンガムという打楽器職人ジョンソン (クマラヴェール) の息子である主人公ピーター (G.V.プラカーシュ・クマール) が、将来を決める年齢になった時、作るのではなく、ムリダンガム演奏者になりたいと、親の反対を押し切って名手アイヤル (ネドゥムディ・ヴェーヌ) に弟子入りをするも、他の弟子の妨害で破門になってしまう。そこから巻き返しなるか?というストーリーなのだが、個人的に『バーフバリ』ブームの影響が強すぎて、この映画にもマサラ的な期待をしてしまい、歌って踊るシーンは有るものの、ヒューマンストーリー性が高く、意外に真摯な内容だったことに驚いた。
…いや(笑)、中々、面白かったんですよ!
勧善懲悪、順風満帆にはいかない主人公、可愛いヒロイン…と、お決まりはちゃんと押さえてます。
インド映画だなぁ〜と思うのは、カースト制度の話が絡んだり、土着のルールがあったり、家族の繋がりを重んじる所です。
どんなに才能に秀でていたとしても、出身地や身分によって、行ける学校や就ける職業に差異があって、出来ることに限られてしまうのです。
現代映画であるこの作品に度肝を抜かれたのは、今どきのオーディション番組があって、そこで優勝をすると、国立音大への切符が貰えるということ。面白い対価です。
カーストも下方に位置する主人公が、古典楽器であるムリダンガムを武器に、機械的効果音とポップでサイケデリックな演出の番組に出場して、社会に挑戦しようというのが、この作品の醍醐味シーンになります。
夢がありますね!
音楽には差別がないということ、万人が自分のビートを持っているということ、反骨心が人の心も未来も変えること、などなど沢山のメッセージがあって素敵な作品でした。
余談ですがネタバレ。
ラストシーンで、アイヤルが子供を抱いていました。誰の子?と私も思いました。QAにて判明。アイヤルの孫だそうです。アイヤルには息子が居るが、息子はカーストも出身地も違う女性と恋に落ち、結婚を反対されて駆け落ちをしたんだそうな。アイヤルが子供を抱いていることで和解を示したシーンであり、その隣には息子の嫁が並んで座っているとの解説。「最初の編集では入れていたんだけど、冗長すぎるので最終版ではカットした」とのことでした。
インド映画、やっぱり長いです…(笑)。
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