「劇場を貸し切って一人で見たい!」青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
劇場を貸し切って一人で見たい!
我が地元の映画館でもやっと上映されることとなり、早速鑑賞してきました。はっきり言ってメチャメチャよかったです!久しぶりの青ブタでしたが、テレビシリーズの雰囲気を少しも損なうことなく、大スクリーンで再会することができ、すぐに作品世界に浸ることができました。各キャラの魅力も全開で、咲太と麻衣に加えて翔子の思いが複雑に絡み、脇の双葉やのどかたちも含めて、全てのキャラに共感できるほどでした。
ここまでキャラを生かすことができたのは、テンポよくまとめあげ、最後の最後まで結末が見えない、秀逸な脚本のおかげだと思います。テレビシリーズで残されたままの謎も解明され、本当にスッキリしました。正直言って、思春期症候群による様々な事象の説明は理解が追いつかないところもありました。しかし、重要なのはそこではなく、自分を犠牲にしてでも大切な人を守りたいという必死な思い、その思いの板挟みでの葛藤と決断で、それが本作から痛いほど強く伝わってくるからこそ、見る者の感動を呼ぶのだと思います。
そんな脚本をさらに輝かせていたのは、バックに流れる音楽です。ここぞという場面で流れるのですが、必要以上に感情を盛り上げようとするあざとさがなく、むしろ優しくしっとりと琴線に触れるようでした。とくにピアノの旋律が、本作の雰囲気やキャラの心情にマッチしているように思え、声優さんたちの名演と相まって、温かな波が心に押し寄せてきました。
ということで、全ての要素がうまく噛み合ったすばらしい作品なのですが、テレビシリーズ視聴済みが前提で、初見の方にはやや不親切です。そこだけがマイナスポイントなので、逆に言えば、予習済みなら間違いなく感動できる作品だということです。劇場には10人程度の観客がいたのですが、できることなら貸し切って一人で見て、周囲に憚ることなく涙を流したかったです。こんなに円盤を買いたくなったのは初めてです。