「トランプ政権を産んだ土壌を糾弾」華氏119 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
トランプ政権を産んだ土壌を糾弾
マイケル・ムーア監督による2018年製作の米穀ドキュメンタリー映画。
原題Fahrenheit 11/9、配給ギャガ。
マイケル・ムーア監督による映画を見るのは初めてだが、見せつけられた事実に対する驚きと共に、弱者に対する熱い眼差しに感銘も受けた。
日本では殆ど報道されていないミシガン州フリント市の鉛入り水道供給による健康問題(行政が住民の鉛の血中濃度値を低値に改竄)とそれに対するオバマの水を飲むふりパーフォマンスと軍隊派遣による対応、学校での銃乱射事件受けての中高生や教員・運転手の大規模デモとその全米への広がり等の紹介に驚かされた。知事公邸を水道放水で攻撃する監督の姿が何ともユニーク。
監督の支持政党である民主党の実態、クリントン夫妻やオバマの資産家優遇政策に対する民衆の支持崩壊が強く印象付けられた。トランプ誕生させたのは、これら民主党の右方展開に要因があると説く。
同級生を銃乱射で亡くした高校生達が、政治家に訴えても取りあってくれず何も動かないことから、SNSを活用して自ら集会を開いて大きなデモに持ち込んでいくのに、心を動かされた。大人たちによる誹謗中傷や退学の脅しにもめけず、死んだ友人たちのありし日の姿を話す(ひいては銃社会の変革を訴える)生徒の肉声に、心が動かされた。
彼の米国政治・民主主義に対する強い危機意識と若者の正義感と行動力への期待の大きさが、画面を通してダイレクトに伝わってきて感動させられた。同時にこういう人間が継続的に映画が撮れるという米国社会の懐の大きさも羨ましく感じた。
製作マイケル・ムーア、カール・ディール、メーガン・オハラ、製作総指揮バーゼル・ハムダン、ティア・レッシン。
脚本マイケル・ムーア、撮影ジェイミー・ロイ ルーク・ガイスビューラー。編集ダグ・エイベル パブロ・プロエンザ、字幕監修池上彰。
出演はマイケル・ムーア、ドナルド・トランプ、バーニー・サンダース。
> こういう人間が継続的に映画が撮れるという米国社会の懐の大きさ
ホント。やりますよね。
日本のドキュメンタリー監督たちも頑張ってますが、ムーア監督みたいなノリ? が少しあった方が観やすいのかもしれないなあ、と時折思います。