劇場公開日 2018年11月2日

  • 予告編を見る

「28年前のフリントの時から」華氏119 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

3.028年前のフリントの時から

2019年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

ブッシュ再戦を阻止するために製作した「華氏911」よりこちらのほうが優れた作品だ。911の方は、アメリカがおかしくなった原因はブッシュにあると批判した作品だった。しかし、「華氏119」はより広い視点でトランプ政権誕生という現象を捉えている。911の方は、ブッシュが原因だと言うばかりだったが、119でマイケル・ムーアはトランプが原因だと言っていない。むしろ、格差などの放置が原因でトランプ政権誕生は、その「結果」なのだと言っている。アメリカメディアがトランプの批判に終始して、本当に報じなければいけないことをおろそかにした結果、地方が荒廃し、エスタブリッシュメントへの怒りがトランプ政権を誕生させた。ムーアの故郷、フリントの惨状を目を覆わずにいられないが、彼がフリント窮状を取り上げたのは、28年前の「ロジャー&ミー」の頃だ。民主党も共和党もその間有効な手立てが打てなかった。トランプ批判とともに既存エスタブリッシュメント批判も忘れていない作品だ。

杉本穂高