「現代アメリカの状況をわかりやすく解き明かす語り口に興味が尽きない」華氏119 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
現代アメリカの状況をわかりやすく解き明かす語り口に興味が尽きない
トランプ政権に異を唱える一作であることは確かだが、「打倒トランプ」以上に、現代アメリカがどのようなダイナミズムに呑み込まれているのかをマイケル・ムーアなりの視点で見つめた映画といった印象も強い。メディアで繰り返し扱われてきた「トランプ」ネタのリサイクルはせず、ムーアならではの思いがけないところからトピックスを切り出し、その過程を入念に辿ることでこの国の現在を見つめようとする。
例えば「水」をめぐる問題はあまりに深刻だ。こんなこと許されていいのかと腸煮えくり返る思いがする。適切に対処してこなかった政治への怒りは当然だし、そういった意味では共和党への糾弾以上に、民主党や政治力学のそのものにもムーアの鋭い矛先が向けられるのが特徴的。狂ってしまった羅針盤を元に戻そうとする人々のムーブメントにも焦点を当てつつ、「なぜこんなことになったのか?」と観客に問い続けるムーアの語り口に興味の尽きない一作だ。
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