ヨーロッパ横断特急のレビュー・感想・評価
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列車て展開されるメタフィクション
アラン・ロブ=グリエ監督によるメタフィクションの傑作。電車に乗り込んだ映画監督たちが車内で映画の構想を練る。その映画の構想も電車を使ったものにしようと映画監督が言い出す。その構想と現実パートが入れ子構造のように展開する。どのシーンが映画なのか、そうでないのか撹乱しながら映画は進んでいく。列車爆破というアイデアを思いついた時のやたらキッチュな爆発イメージのあとに示されるリアルな列車の残骸。唐突に始めるSMシーン、二転三転する映画の内容に合わせて、映画全体も右往左往する。
本作の主な舞台が電車であることがやはり気になる。映画の歴史はリュミエール兄弟の「列車の到着」から始まったことを考えると、虚構と現実がないまぜになったこの作品は、リュミエール兄弟から始まった映画と現実の関わり方を再構築しようと試みているように思える。向かってくる列車に驚いた観客は映画を現実と認識したかもしれない。この映画を見る僕も何が現実だかわからなくなる。虚構と現実の境界線を引き直す作品なのだと思う。
凝ったつくりを明るく楽しむ
アラン・ロブ・グリエ監督
映画作りのプロ3人が、アントワープに向う列車の中で、作品の構想を練り上げる。その作品と、練られていく過程、その二つを行き来する。練り上げ過程も楽しめるうえに、ふっと脇道へ抜ける軽さがある。
つくられた作品の中身、これがなかなか面白い。「プティジャン神父…」子どものようにワクワクする秘密の合い言葉シーン。当然これは本番だと誰もが思わされてしまう(汗;)。仲間と警察両方の監視構造、エヴァのこと、そして、自身の性的嗜好で簡単に足元をすくわれるという超ダメっぷり。
エリアスは、超イケメンの渋くてカッコいい男。(が、緊張と自信のなさは隠しきれていない。トランティニャンの演技の絶妙だこと!)その渋い男と、情けない結末の組み合わせが、絶妙なユーモア。
この人の作品は、籠もった陰鬱な気分にさせるものが多いようだが、この映画はそうではなかった。
メタ映画的 色男
ヌーヴォー・ロマンの代表作
【 アラン・ロブ=グリエ監督、1966年発表 】
内容は麻薬運びに右往左往する運び屋候補生の話。
指定された特急列車に乗って目的地のアントワープへ向かう。という話を特急列車に揺られながら作家たちが創作する。おや不審な男が乗ってきた……。
メタの何重重ねで観るものの現実と妄想の境を溶かしてゆきます。筋を追ってはダメです。考えるな感じろ!
フェリーニの『8 1/2』や ウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』など好みの方はきっと好きなはず。
ちなみに見どころは主人公の特殊性癖(SM趣向)が仇になるショットです。劇場では、笑いはありませんでしたが、心の内でふふっとしてしまいました。
他、暗示めいた小道具も多く、推理する楽しさもありでロブ=グリエの作品の中ではとっつきやすい作品となっています。
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