「重厚なドキュメンタリー映画」共犯者たち SHさんの映画レビュー(感想・評価)
重厚なドキュメンタリー映画
トップの不正や政治的汚職を告発しようという意図よりも、ジャーナリスト魂を表現しようという意図を強く感じた。
天下りとかメディアへの政治介入とか受け入れ難い記録が展開されるけれど、正直これはかなり韓国国内のメディアと政治情勢に精通してなければ難しいと感じた。それと韓国語も理解していないと、完璧にはついていけないような気がした。
それでも何となくは理解できるので、率直に感じたことといえば、李明博がメディアに対して政治介入し始めたという描き方にはなるほどとは思えても、特段不正とは思えなかった、やり方は強引かもしれないけれど─。なので、李明博に対して突撃の追及を試みる場面などに違和感を覚えてしまった。
一方、セウォル号の報道や朴槿恵政治スキャンダル報道に関する誤報や隠蔽体質は大問題。事実は詳細には描いていたものの、それを深く追及していないと感じたのでやや不満。この誤報などの現況は李明博政権から始まっているという描き方のように受け取ったけれど、いまいち説得力に欠けるところがあった。
もっとも、この作品の最大の意図は、いかにジャーナリストが権力と戦ったかというところであり、そこの部分は非常によく描かれていたし心が揺さぶられた。
理不尽な強権に対する抵抗は、混乱や悲劇的な出来事を引き起こしてしまうが、その対立こそ健全な社会構造に思えるところがあった。ただ、そのことによる犠牲は多大なもので、だからこそこういった告発的な映画が生まれたのであろう。
豊富な映像と、しっかりとしたインタビューを積み重ねた重厚でドラマチックなドキュメンタリー映画で見応えがあったけれど、欲をいえば、こういった作風ならば時折差し込まれる風景映像などがもっとクオリティが高ければいいのに…と思ってしまった。