「舵の取れない舟」赤い雪 Red Snow atararuiさんの映画レビュー(感想・評価)
舵の取れない舟
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葉桜の季節 桜の花びらが名残りおしそうに舞い散るなか赤い雪を観てきました
雪が光の赤い色や音を吸収してしまうかのように
小百合と一希の中に降り積もった溶けない雪は小百合の口を閉ざし言葉を吸収し 一希の記憶をも忘却の彼方へと推しやってしまう
その雪を溶かすきっかけは木立
木立は炎の役目 一度導火線に発火したらその炎は次々と引火して新たなる殺人を導く 掘り起こしてはならない記憶だったのか真実を暴こうとすると共にそれまでの均衡が崩れその雪崩へと巻き込まれることに
さゆりが重たい口を開いた時
一希の記憶が呼び起こされる
幼かったにしろ幇助罪にあたるのか?
見てはいけないものを見てしまった時それが近親者であるほどに
重たい雪はやがて凍ってしまうこともあるのだろう
ラストで二人は同じ舟に乗る
封印していた罪の意識を認識した瞬間だと思った
吹雪に掻き消されたその行先にあるのは逃げ場のない記憶
パンフレットによるとワイエスのクリスティーナの世界が甲斐監督の頭の中にあり赤い雪の世界観の元になっているとのこと 何とも奥深い
サスペンスにアートと心理を絡ませた感 全く違和感なくその世界観に引き込まれた ラスト舟に乗った二人はどこへも舵を取れず動けないまま
苦しみの果てに心に降り続ける雪が止んだならその白日の下に真実も浮き彫りになる日がくるのかも知れない そう信じたい
追記
注目点として赤いコートの女
これが何食わぬ顔して生き抜く母体として残ることで頗る後味が悪い
でもだからこそ赤い雪というタイトルが生きてくるのかも知れません
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