「被害者の兄と加害者の娘の末路」赤い雪 Red Snow 突貫小僧さんの映画レビュー(感想・評価)
被害者の兄と加害者の娘の末路
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数多くの著名人の感動のコメントに誘惑されたわけでもない。
寒い海があるさびれた村で、満面真っ白い雪景色の美しさに感動した方々も少なくはないだろう。画面に、2つ点が見え、二人の人間が走っているのを後方から追いかけているのが鮮明となる。この作品は、そうして始まるのだが、兄が弟を追いかけているのだが、なかなか追いつかない。弟が赤い点のように見えていたが、赤い色の服を着ていたか?
話しが進んでいくうち、弟が自宅で誰かの電話を取り、一目散に出ていく。母親は、誰からの電話か知っているかのように、兄に弟を追うように命じる。誰からの電話だったのだろうか?いつの間にか弟を見失う兄。失踪した弟の「記憶」は、いかに曖昧なものか。
30年前、弟を見失い過去を彷徨う一希。30年前の過去を知り、母のDVに耐え、押し入れから外を凝視する毎日。発達障害であり、自宅で幽閉され続けた、不気味な笑いを続ける小百合。そんな二人が雪原で出くわし、純白の白い雪原で、菜葉菜と永瀬が争う。思わず、女は呻き死に至る描写が光る。
曖昧な記憶を抱える兄 一希。彼は、記憶の中で朧げな弟の影を覗いた江藤の家の中に見ることになる。兄は、漆器の漆塗りに没頭する。またも弟の「記憶」に苦しめられる状態に陥るのである。不幸を背負う者たちの描写がやるせない。
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