劇場公開日 2019年4月27日

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「憲法前文の朗読がこんなに心地よいなんて・・・」誰がために憲法はある kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0憲法前文の朗読がこんなに心地よいなんて・・・

2019年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 まずは映画配給会社・太秦(うずまさ)が凄いと思う。これほど良質作品、また問題作まで世に送り出している会社に敬意を表したい。

 映画は日本国憲法を擬人化した「憲法くん」の一人語り。芸人松元ヒロが20年以上演じ続けてきている舞台だ。これを俳優の渡辺美佐子が演じているのだが、80代の彼女のトーンは年齢を感じさせない、透き通るような美しさのため、うっとりするくらい心に響いてくるのです。ただ、この12分の一人芝居だけでは映画が成り立たないので、女優仲間たちと続けている原爆朗読劇とそのインタビューにより構成されている。

 この憲法くんが語る中にも「アメリカから押し付けられたんじゃない?」とか、「70年も経ったのなら古くなったんじゃない?」などの疑問にも丁寧に答えてくれます。

 ただ、思うのは自民党の憲法改正草案を見る限りでは、時代に逆行して古めかしい日本国を作ろうとしか思えない内容だ。元号が令和に変わった今、平成天皇も仰っていた「象徴天皇であること」を今上天皇も引き継いでいましたが、自民党の草案では「天皇を元首とする」とハッキリ書いてある。平和主義のお考えであられる天皇がこれを利用して軍国国家にするとは到底思えないのですが、これを利用する政治家は必ず現れる。そして最大の争点である第9条自民党内でもまとまってないのでさておき、現行憲法の基本は「国民主権、戦争の放棄、基本的人権の尊重」の3本柱であるが、自民党の草案を読めば、これらがことごとく破壊され戦前もしくは大日本帝国憲法へと逆行しようとしていることは否めない。憲法は古いから時代に流れに乗った形でと主張しつつ、むしろもっと古臭いものにしようとしてるのだ。

 アベちゃんも2020年には新憲法を施行したいとか豪語してますけど、「議論は十分なされた」などと嘘ばっかし言って誤魔化すのはやめましょうよ。そもそも悪い政治家を監視する役割を果たすのが憲法なんだから、アベちゃん自身が改憲の最右翼になること自体が憲法違反。9条変える前にアメリカ大統領の三選禁止みたいに総理大臣の三選も禁止という項目入れてくれたら納得がいくと思うよ。

 今の世の中がおかしいのは、護憲だとか反戦だとかを唱えると、ネトウヨの方から「サヨク」だの「パヨク」だのと攻撃されることが挙げられよう。中立でありながらも非難されると、意見を述べる人も委縮してしまい、本音を言えなくなるいやーな世界でもあります。面白いもので、「南京事件」を持ち出せば必ず反論として「通州事件」を切り出してくるし、ネトウヨたちの反論もワンパターンで可哀そうになってくるほどです。そうした歴史修正主義者の中には「日本人は戦争で人を殺したことがない!」などと力説してくる人も実際にいたりします。

 ちょっと話が逸れましたが、後半には原爆朗読会と彼女たちのインタビュー。原爆投下直後の悲惨な様子が被害者目線で語られ、女優たちの口調が何とも言えない響きをもって胸に熱く突き刺さります。そんな中でも、大橋芳枝さんの父親が語ったという「戦争で死ぬくらいなら、戦争に反対して死ね」という言葉がぐさりと心にナイフを突き立てられ、俺もこの言葉いただき~てなくらいに記憶に留めておきたい言葉となりました。

 「戦争は二度と起こしてはならない」という言葉に誰も反論できないのと同じで、70年以上戦争をしなかった日本に対して誰も悪くは言わないことでしょう。そんな心の拠り所になるのが日本国憲法なんだと感じました。美しい日本語で語られた憲法前文に思わず涙してしまった。

kossy
kossyさんのコメント
2019年7月6日

きりん様
コメントありがとうございました。
いや~この前文、本当に朗読が心地よかったです。
やっぱり女性が読んだほうがいいみたいです。

kossy
きりんさんのコメント
2019年7月6日

「憲法前文」
崇高ですよねー。
占領軍のアメリカの企みを図らずしも超越してしまっている人類の理想の姿と思います。

kossy kossy さん「君の名は。」へのコメントありがとうございました(笑)
返信入れておきましたので読んで下さいね。

きりん