「描きたいものがよくわからんチグハグ作品」マイ・サンシャイン つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
描きたいものがよくわからんチグハグ作品
例えば盗むことについて、多くの日本人の感覚では、細かい違いなどはあるだろうが、要は「悪いこと」だからしない。
一方アメリカなんかだと、もちろん一部の人だと信じたいが、「盗めないから盗まない」のだ。逆に言えば盗めるなら盗むというわけだ。
そんな者たちと、「孤狼の血」よろしく「警察じゃけん何をしてもええんじゃ」の対決。それがロサンゼルス暴動。
そんな中を、貧しいながらも保護者のいない子どもを引き取って大家族を形成するハル・ベリー演じるミリーがささやかに奮闘する。
加えて隣家の白人男性(ダニエル・クレイグ)との軽ーいロマンス。
更に、本作の主人公ポジションであろう長男ジェシーの青春と、暴動に飲み込まれていく姿を描く。
普通に面白く観たのだが、多くの事がありすぎて、しかもまとまっている感じもないので、結局のところ何が伝えたいものだったのかさっぱりわからない。
極端な言い方をすれば、主人公一家の出来事とロサンゼルス暴動があんまり関係なくて、家族の話を描きたいのか暴動を描きたいのかわからないし、暴動前のロドニー・キング事件や暴動自体によって主人公たちの何かが変わったということもない。
本作は合作だけど一応フランス映画になるのかな?監督はトルコ出身でフランスに移住した女性。
ヨーロッパから見たロサンゼルス暴動って感じで、特に伝えたい事があるわけではないのかもな。
それか、まあ単純に、気を付けないとこんな風になるぞとフランス人に警告的な?
暴動以外のほとんどの事が起承転結の起で終わってしまったり、結がなかったり、結がないのはその前がちゃんと作られていれば構わないのだけれど、今回はとにかく描写不足で、自力で結を導き出せるほどの情報はなかった。
三時間の大作を半分にしました。みたいなチグハグさで良くできてるとは言い難い。