「親子愛と表現差のエゴと社会的意義とがせめぎ合う」ぼけますから、よろしくお願いします。 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
親子愛と表現差のエゴと社会的意義とがせめぎ合う
認知症の母を介護する90を超えた耳の遠い父と、その様子を撮影する娘。カメラを誰かに向けるということは残酷な行為なのだということが本当によくわかる。しかし、撮影という行為の加害性に気づいてもやめてはいけない時もある。本作はまさにそういう瞬間の連続だった。
自分らしく生きることを父は娘に求めた。娘が選んだのは映像で表現する世界、どれだけ残酷でもそれを貫徹することこそが親孝行なのだと考えたのかもしれない。
そして、カメラが写すものは老老介護の厳しい現実。それは高齢化社会を迎えた日本のいたるとこにある現実でもある。パーソナルな親子愛と、撮影者のエゴと、社会的に重大な意義がせめぎ合うすごい映画だ。
撮られる対象は時に大きく傷ついている。それでも記録を残すことは、社会の糧になるのならカメラを止めるわけにはいかない。それが監督の生き方なのだ。その生き方を選ばせてくれた親への恩返しなのだ。
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