「『私で良かった』ボブ・ディランの『BORN IN TIME』」37セカンズ マサシさんの映画レビュー(感想・評価)
『私で良かった』ボブ・ディランの『BORN IN TIME』
懸命に生きようする女性の話。
やはり、こう言った話は、賢明な女性の監督の偉業だと思う。
『私で良かった』この台詞の意味する所が大事な所だと思う。
つまり、
相手を思いやって『私で良かった』
と、
相手にそう思われるのが嫌だから『私で良かった』
さて、どちらだろうか?僕は彼女の取った行動を総括すれば、相手への思いやりではないと思う。そんな自己犠牲的な献身者ではないと見た。言葉が悪いが『自己中心的』で『自立している』と思う。
つまり、もっと適切な台詞があるとすれば、『貴女じゃなくて本当に良かった』だと思う。ハグをするが、主人公は泣いていない。同様にどんな場面でも彼女は泣かなかった。僕はそれで良いと思う。
だから、この映画は感動する。
この映画のテーマだと思う。この映画の演出家はそこが分かっている。
また、母親、編集者、アイドルまがいの偽漫画家、そして、自分と、もう一人の自分も、全員、性格をデフォルメしている。しかし、デフォルメで生じる矛盾を抑える努力が、この演出家には見受けられる。例えば編集長が『アダルトな漫画を書くなら、アダルトな経験をしなけりゃ』とのたまうが、それは男ならばこそ。言うに及ばず、そんな経験しない女性の方が『妄想がわく』ものである。つまり、エロとはギャップ。大多数の男はそれを知っている。この演出家はそこへ観客の目を誘っている。勿論、意識的に。
商業的に考えれば、出演者に人件費を使わずに、ロケ地を選んだ打算が素晴らしい。そう言った所にお金を投資してもらいたいものだ。固定概念をバリバリに身にまとった国民的俳優じゃなくとも、演技のうまい俳優やアイドルは沢山存在する。だから、国民的に名の通った俳優を主役に据えている様な作品は、興行だけを目標としていると見るべきだ。勿論、演出も演出家の指示がなくとも、俳優は自分のモノを持っている。そして、国民的名の通った俳優は、自らその殻を破ろうとする事は稀である。
兎も角、この映画は大傑作だと思う。次回作に期待する。しばらくぶりで良い日本映画を見た。
ボブ・ディランの
『BORN IN TIME』を聞いていて涙が流れるのは、この作品を見たからか?
2024年 ある国の国境にて
2024年7月25日17時15分
共感ポイント&コメント、そしてフォローありがとうございます 大変恐縮しております
この作品、もう3年前になるんですね 光陰矢のごとしとはこのことだなと感慨に耽ります
今作のように、ノーマライゼーションの理念を喩え作劇とはいえ、具現性を表現した作品は定期的に作られていくべきだと願っております 勿論、説教じみたテーマではなく、健常者と変わらない演出や撮影方法であるべきだと思います
リアリティを追求すること、ファンタジーを紡ぐこと、その両方に総合芸術としての映画の使命はあるのでしょうね
貴殿の真摯且つ深い洞察力を用いたレビューに感嘆しております
PLAN75のレビュー再掲示は、いずれ^^