劇場公開日 2020年2月7日

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「車いすの人に目線を合わせるのではなく視野の違いを噛みしめる作品」37セカンズ たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0車いすの人に目線を合わせるのではなく視野の違いを噛みしめる作品

2021年10月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

楽しい

幸せ

実にしなやかで行き届いた空気のする映画。ユニバーサルな世界のコントラストが見事。卓越した才能が色とりどりに出てて心にジンワリと溶けていく。

噂に聞いていた通りの優しい映画だけど、そのアプローチがここまでトリッキーかつキュートだったとは。脳性まひによってできる事が限られている、そんな状況を見せてからのロードムービー。人の出会いってこんなに人生を彩ってくれるのかと改めて幸福を感じる。しかも、随所に出てくるキャストもまた堪らない。最近観た『プリテンダーズ』くらい数シーンたちが豪華で、凄いなと思ったらNHKも制作に携わっている。意外とアダルトな部分も軸足としているだけに、妥協ない作りをするんだという制作陣の気概を感じる。

さらに、HIKARI監督のセンスに驚かされる。障害を抱えている人の視点を描きながらも、健常者との距離感も優しく詰めていてホッコリする。自分を変えるための方法は誰だって平等にあるのかもしれない。また、音楽やロケーションによる世界の開かれ方、幾重に組まれた変化が美しい。悪役にならないバランスも絶妙で、犠牲も少ないことに感心する。

佳山明の人生もきっと演技に大きなプラスになっているんだろうと思うほど自然体で良かった。世界が唸るその才能が見えにくい視点を描いてくれたことによる恩恵をつくづく噛みしめる。

たいよーさん。