「救世主の呪縛」ターミネーター ニュー・フェイト 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
救世主の呪縛
不朽のSFアクションスリラー『ターミネーター』!
伝説的SFアクション超大作『ターミネーター2』!
その監督ジェームズ・キャメロンが製作復帰し、
直属の続編として再始動した話題作が遂に公開。
『3』『4』はさておきパラレル設定の
『新起動(ジェニシス)』は個人的にはいい線
行ってたと思うんですが……ジョンの設定や
アクションの軽さ等の不満はあったけどさ……
キャメロンも当時は褒めてたよね……ねえ……
まあ『新起動』も「1、2作目は越えられぬ」
という事を前提に作られてた感はあった訳で、
キャメロンが製作復帰そしてリンダ・ハミルトン
もカムバックした本作『ニュー・フェイト』は
よほどの覚悟で作られたのだろうと感じていた。
実際に鑑賞した今、確かにチャレンジングな
ことをやった作品だと感じるし、これまで
作られた関連作と比較しても最も壮絶で
重量感のある作品なのも間違いない。
……若干含みのある書き方には理由があります。
今回の判定は3.75といった所だが、実は2回
鑑賞して2回目の印象の方を採用している。
1回目の印象は判定2.75~3.00。しかし
気持ちを整理して再度鑑賞してみたところ、
不思議と1回目よりも楽しめたんである。
...
まず不満点から全部吐き出そうか。
構成上難しいと思うけど、今回の保護対象
であるダニーと、女戦士グレースとの繋がりが
若干薄めに感じられる。グレースは人間的な
脆さがあって好きだが、直接ダニーに向けて
脆さを露呈する場面がもっと欲しかったかも。
T-800あらためカールは『T2』でも自己学習
能力があると示唆されていたので『T2』以上
に人間的に成り得るとは思うのだが、そこを
納得させるにはちょっと描写が短い。彼の
成長をもう少し詳しく語ってくれれば。
仇敵REV-9もね、良い点は多いが(後述)、
“ネット追跡”のアイデアは想像の範疇だし
T-1000を越える細かなサプライズや騙し討ち
とかの意表を突く知略を見せて欲しかった。
……あと、“ディーン少佐”って誰だったん?
...
だが最大の不満点は……まあ何となく
お察しだろうが、ジョン・コナーの死。
これは毎度見極めが難しい所なのだけど、
映画を最大限楽しむ上ではある程度の予習
は必要と思うが、あまりに多くの前情報を
仕入れると、そのせいで自分の理想の
シナリオを勝手に思い描いてしまって、
結果的に「自分の観たい物と違う……」
とガッカリしてしまうことがある。
今回、自分はそこで失敗した感がある。
最大の失敗は『エドワード・ファーロング
も出演!』という情報を見てしまった事だ。
あまりにも偉大な『T2』の直接の続編を謳い、
さらにその主人公のひとりであるファーロング
=ジョン・コナーが出演するとなると、彼が
何らかの形で本筋にも関わってくるだろうと
思ってしまった訳で。
冒頭のあの衝撃的な展開は、
『T2』のジョンとT-800のドラマに涙した
自分としては「1997の悲劇は回避されたにせよ
あのジョンがこんなあっさり死ぬなんてーー」
と、すぐには受け入れられなかった。なので、
サラへメッセージを送り続ける謎の人物、
T800=カールが人間性に目覚めた理由、
未来のリーダー等のミステリが提示されるたび、
「ここからひとヒネリあってジョンが再登場?」
と考えてしまい、サラを除く今回の主要キャラ
に感情移入しきれず終わってしまったんである。
『2』以降のどの作品も、新たな敵や
アクション規模以上に、ジョンという救世主
の扱い方に手こずっていた気がする。本作は
いよいよそこを最初に断ち切るという選択を
した訳だ。そこは最大の不満点だけれどーー
新キャラクターとサラの新たなドラマを描く
上では、同時に最大の強みにもなっている。
...
はい、褒める。
まずはアクション!
序盤のカーチェイスは疾走感も重量感も見事で、
瞬きすら忘れるド迫力! ここは全シリーズ
含めても屈指のアクションじゃなかろうか?
収容所でのREV-9の殺戮や輸送機内での半重力
格闘戦なども良かったし、そこから湖底バトル
を挟んでノンストップで突入する終盤戦も凄い。
それまでバラバラだった主人公4人が
一致団結して見せる怒濤の連携プレイ!
グレースの高速鎖ヒュンヒュンとか
サラのノールック撃墜とか超かっけー!
今回の仇敵REV-9は『3』『新起動』の拡張版
という印象ではあるけど、外骨格と内骨格が
連携して襲い来るアイデアは冴えているし、
何よりT-1000の印象を越えるほどにとにかく
タフでしぶとい。ぜんッぜん死ぬ気配が無い。
「一生分神に祈ったよ」「全身が武器さ☆」
と、フレンドリー&ジェントルな所も大進化。
対する主人公勢。
女戦士グレースの強さと一途さに惚れ惚れ。
師であり育ての親でもあったダニーのため、
強化改造やピーキーな能力ゆえの苦痛に
ひたすらに耐える彼女が健気で泣ける。
ダニーが少しずつ抵抗軍の指導者に相応しい
意志の強さを手に入れてゆく流れも好きだし、
かつて冷たい機械だったカールが良心と後悔に
目覚め、罪を贖うかのように「もう戻らない」
と語る場面にもウルッと来てしまった。
そしてサラ。
最高にタフな彼女の登場シーンは超クール!
だがそんな彼女がカールに出会った後で見せる
抜け殻のような表情は悲痛だったし、そこから
“第2のジョン”であるダニーを護ろうと
再びタフになる心の移り変わりが良い。
ジョンと同じ意志を持つダニー、
ダニーに未来の希望を見たグレース、
ダニーに亡きジョンの姿を重ねるサラ、
ジョンへの罪の意識に苦しんだカール、
初めはバラバラだった主人公4人が、
「ジョンの為に」という言葉で団結する。
この物語はそこに至るまでの旅路だったと
思うし、グレースにとってのダニーのように
サラがダニーの師/母となり、“リージョン”
による審判の日を回避するべく闘志を
燃やすラストに力強い希望を感じる。
...
流石に伝説の『T2』までには至らなかったし、
この続編に何を求めるかによっては大きく
幻滅してしまう部分もあるかも知れない。
だけど、これまでの関連作の中では最も
挑戦的でド迫力の出来だったと思います。
それを踏まえて、ちょいと高めかもだが
大満足の4.0判定で。
<2019.11.09鑑賞>
※修正:
『ジェニシス』は『再起動』じゃなくて
『新起動』でしたね。本作も『ダーク・
フェイト』とずっと呼んでたけど
『ニュー・フェイト』が邦題でややこし。
【注:本編ネタバレ含みます】
MAKOさん、こちらにもコメントありがとうございました!
レビュー終盤に書いてはいるんですが、ジョンの退場を前提として観ればうまく出来た物語だと僕も思いましたね。
なのでこの作品は『新起動(ジェニシス)』のようにパラレル世界の『ターミネーター』だと割り切って楽しむようにしてます(笑)。
不満点は自分も同じですが、ジョンが死んでいたからこそ「ジョンのために」というセリフもグッとくるものになったんじゃないでしょうか。
エドワード・ファーロングいまやチビのおっさんだし(笑)