「甘美で官能的な思い出と美しいロシア風景、歴史上で繰り返すロシア知識人の苦悩」サンストローク 十月革命の記憶 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
甘美で官能的な思い出と美しいロシア風景、歴史上で繰り返すロシア知識人の苦悩
監督・脚本ニキータ・ミハルコフによる2014年製作のロシア映画。
1920年のソ連革命派との戦いの末、命は保証するとして捉えられたロシア王朝側の白軍将校達の革命派による虐殺(海へ沈める)という歴史的事件を舞台に、一将校の思い出、甘美な一夜の恋を描く。
ヴォルガ川を運航する舟で見初めて恋の相手となる美女(ビクートリア・ソロウイオワ)が身につけていた空色の薄いスカーフが風に舞う様、彼女がはめている黒い手袋を脱ぐ様が、何とも美しく妖しい。舟を降りて泊まったホテルで一気に衣装を脱ぎ裸身となる彼女、映像は控えめながら何とも官能的であった。
そして、彼女が朝消えた後、教会へ通っていた少年との出会いと温かいやりとり、その背景となるロシアの風景の美しさに感銘。少年は新たに学んだ進化論がショッキングだったらしい。その延長線上でか彼が成長し、マルクス主義者として白軍虐殺の指示をするとは。
ロシアの歴史の必然なのか運命なのか、教養人たる主人公たちの、「どうしてこんな風になってしまったのか?」との問いが、突き刺さる。現在のロシアの知識人たちへの問いでもあるのだろうか?
白軍の大量処刑を命じたという女性共産党幹部ロザリア・ゼムリャチカ(ミリアム・セホンが名演技)のエキセントリックな性格描写も印象に残った。今も昔も変わらず、甘美ロシア(ソ連)の指導者というのは、命を平気で奪う輩なのだろうか。
原作はイワン・ブーニン(ノーベル賞作家)の「日射病」。
脚本は監督、ウラディミール・モイシエンコ、アレクサンドル・アダバシャン。撮影はウラジスラフ・オペリアンツ、音楽はエドゥアルド・アルテミエフ。
出演はマルティンス・カリータ、ビクートリア・ソロウイオワ、アナスタシア・イマモヴァ、ミリアム・セホン。