「77」7月22日 Kjさんの映画レビュー(感想・評価)
77
10年も経っていない77名もの生命が奪われた事件。作り手は非常にセンシティブに映像化に臨んだことだろう。そのことがよく伝わる。アクション映画で描かれるようなプロフェッショナルに用意周到なテロではない。単純でダイレクト、無造作で無慈悲な手口。テロリストを演じた俳優は相当な覚悟で臨んだろう。被害者の少年役にしてもそう、演者には敬意を払いたい。
弟のトラウマ、それでも社会生活を続けなければならぬ両親、そして何よりも秩序に対して忠節を尽くす弁護士の姿。拾うべき所をひとつひとつ広く捕まえて、この事件の全体像を表現している。決して意図的に解釈を強要するアプローチはとっていない。それだけに闇の深い問いかけがこちらに投げかけられる。
結局、何がこの事件を生んだのか?社会の劣化が進み、情報量の多さがそれを繕う猶予を与えてくれない。秩序の虚構性が暴かれやすい世の中、しかしそれでも共有する価値観を維持できねば、社会は更なる破綻を迎えてしまう。難しいが挑戦を受けているのは我々自身。ノルウェーやヨーロッパだけの問題だけではなく、全世界的に同時進行している課題。
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