ROMA ローマのレビュー・感想・評価
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正直な人間の弱さ
個人評価:3.8
アルフォンソ・キュアロン監督の半自叙伝との事だが、ゼログラビティとはうって変わって、全く違う作風である。
誇張や脚色もなく人間其の物をあるがままに描いた作品であると感じる。
人間は無慈悲で冷たく弱くそして温かい。召使いである女性の瞳を通しストレート伝わってくる。そんなどの時代も変わらない普遍的なテーマを描いている。
命は尊いモノと当たり前のように人生の教科書には書かれているが、向き合い方まで誰も教えてくれない。
母親になるはずだった女性の正直な弱さがとてもリアルに描かれ、心を動かされる。
映画としてはゆっくりとした描写やペース配分で間伸びするが、良作と感じる。
映像が非常に美しい
ナチュラルで非常に美しい映像に、とにかく魅了された。
終始静寂に包まれた作品ながら、全く飽きることなく、どんどん引き込まれていった要因は、絶妙な演出にあるような気がした。必然でありながらも偶然と思わせてしまう目論見やら、時々笑えるところなどが非常に印象的で、想像を超えた煌びやかなものを感じた。
この時代のモノクロ映画には決して肯定的になれないけれど、こういった作品を目の当たりにすると、ぐうの音も出ない。そこに確固たる意志と、カラーを超越した色彩を見いだしてしまう。
映像そのもので感動できる作品だった。
幸せを描いた映画ではなく、むしろ厳しい現実を目の当たりにする。それ...
幸せを描いた映画ではなく、むしろ厳しい現実を目の当たりにする。それでもそんな日常の積み重ねを通して人間の温かさが静かに心に沁みこんできた。モノクロ映像も効果的。
臨場感
予備知識を余り入れずに気軽に観る
日々の生活描写を眺めるうちに、その家庭にすうっと溶けむように入り込んでしまう。
淡々とながれる心地のよい時間と時折起こる大小のイベントで織りなす、心に沁みる人間模様。
鑑賞後、「監督からのメッセージ」には素直に頷きました。
市井から普遍へ
大風呂敷を広げた物語より、今この時代に必要とされていることは、本作のような、市井に宿るドラマだ。
本作や『万引き家族』のような、日常と生活のスケールから始まり帰納的に普遍へと導いていく作品が、およそ多くの共感を呼び、新たな時代を率いていくのだろう。
言うコト聞かねぇんだヨ、ガキは
最後まで親に言われたことを守らないイタズラ好きな子供が四人も!これは多くて大変だ!!
槍の宝蔵院フルチン野郎は映画館からバックれて情けないくらいの恫喝を浴びせてキャラが強くて笑っちゃう。
床を水で洗い流した時に映る飛行機から写真集を観ている雰囲気の映像とスクリーンで鑑賞できないのが惜しい綺麗な描写の数々。
対照的な女性が強く逞しく生きて行かなければならない姿をクレオにも母親にも共感しながら少しハラハラしたり大いに感動したり最後には和める余韻に浸って。
希望のある終わり方でホッと一安心。
きれいな映像だけど
アカデミー賞で外国語映画部門でなく作品賞の方に回ってくれたら「万引き家族」にも可能性が出るのに、というくらい高評価で、確かに白黒にも関わらず映像がきれいだと思ってしまうのはすごい。
1970年のメキシコで、ある一家にメイドとして働く若い女性が主人公で、彼女の妊娠を話の中心に据えつつ、メイドと4人の子供の関係、夫の浮気による離婚で傷つき、しかし自立の決心をする女性、その当時ならおそらく珍しくもなかった彼女の妊娠に全く理解のない元恋人?、その彼も参加していた学生による暴動など、色んなものを、静かに描いている。主人公も無口な女の子だが、悲しそうだったり、優しそうだったり、と表情豊か。
しかし淡々としていて退屈と感じる人もいるのでは?
あの奥義はどこで…
作り手の意図もあってか、積極的に説明はしてこない。流れる映像から彼女の周りの人や環境を把握する。誰ともどこにも属することがなく、時間は流れる。雇用主との目線の違い、医師の事務的な応対。鉄砲を撃ち放し、シャンパン片手に山火事を見物する人達、ここは彼女の居場所でない。しかし、他に用意されているわけではない。何故、産むのか?助けるのか?生かされている訳ではなく生きている。社会が分断されていても、生きている人に尊厳を。
人に歴史あり
監督の個人的な回想録だが、そのドラマティックなこと! 小津や木下的なカメラワークが子供の目線を表現できて見てる僕も体現できた。
市井の人の人生はそのすべてがドラマティックだ。政治的背景や時代もあるだろうがつまらない人生は無い。クレオに起きた悲しい出来事がみんなに癒やされていく、告白できたあのシーンは白眉。いい映画です。
絶えず"One Perfect Shot"
4K有機ELTVドルビービジョンで鑑賞(ここ重要)。キュアロン自ら撮影監督を務めた本作、あまりにも美し過ぎて唸る。6KのALEXA65を用い、得意の長回しを含むあらゆる撮影技法が駆使され、緻密に計算された構図、観たこともない構図が絶えず形成される。まさに"One Perfect Shot"の連続体
物語は『万引き家族』との類似性があって驚いた。同作は是枝監督が(気持ちの上では)一人の少女に向けて作ったという。『ROMA/ローマ』もラストにキュアロンの乳母への献辞がある。二作ともミクロな視点で語り、マクロなテーマを提示してみせる。まさにこれは「こんな時代」の傑作なんだなと思った
モノクロ映像の美しさよ
素晴らしい。
1970年代初頭のメキシコシティが舞台。(タイトルの意味は語られないが意味があるのだろう)
美しいモノクロ映像と効果的な移動撮影。淡々としながらもハッとするショットが飛び出すマジック。正面から描く家族愛。
どこか古いヨーロッパ映画を思わせるような堂々たる語り口が素晴らしい。満を持して自伝的映画を撮ったという感じ。人物は多くを語らぬが映像が豊穣なイメージに溢れている。
これを配信で観てしまっていいのか、という程素晴らしい内容でした。
激動の時代を支えた女性たち
東京国際映画祭にて鑑賞。
とても、感動した
最後には堰を切ったように、ポロポロと泣いてしまった
1960年代後半から1970年代のメキシコを、ある中流家庭に仕える家政婦クレオの視点で描く
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品
しかし、映画館で観られる機会は今日しかないということで、観に行ってきた
その当時、メキシコシティで幼少期を過ごしていたキュアロン監督の体験も盛り込まれた作品なんだとか
主人公のクレオが雇われていた家庭は中流家庭で、一家の主人であるお父さんは出張と言っては、外で二重生活を送るような人だった
妻のソフィアは4人の子供たちを抱えながら、帰ってこない夫に苛立ちを募らせる
そんな家庭を陰ながら支えていたのが、家政婦のクレオだった
その頃のメキシコは、オリンピックを終え、高度経済成長期に沸き、活気があった様子が描かれている
しかし、そのせいなのか、男性たちは経済発展の波に乗り、とても勝手で「女なんかに構ってられない」といった雰囲気
子供を作ろうが、妊娠させようが
そんなことよりも、新時代への理想に燃えているといった感じ
そんな浮き足立った男性たちの影で、地に足をつけて家庭を支えていたのは女性たちだった
主人公のクレオは、自分自身にま不安なことが起きているにもかかわらず、嫌な顔一つせず、毎日、女主人や子供たちのために働いている
恐らく、キュアロン監督自身が、そういう環境で育ち、一流監督の地位を得た今だからこそ、感謝したい家政婦がいたんだろうと思う
そんな監督の気持ちを代弁するかのように、子供たちは、クレオを本当の母のように慕い、愛情を注ぐ姿には涙が溢れてしまった
きっと、クレオも自分の子供のように思っていただろう
そこには、血縁を超えた相思相愛のピュアな愛情があって、その純粋さがこの映画を美しく輝くものにしている
家政婦と雇い主の間には、明らかな階級の違いなど、どうしても超えられない壁があるけれど、この映画の一家は、そんな壁を超え、クレオは家族の一員だと思えたところがとても良かった
だからこそ、キュアロン監督は、そんな家庭ですくすくと育ち、今の地位を築くまでの人物になったんだろうなぁと思った
極上の映画体験
東京国際映画祭にて。
Netflix配給なのでこの先劇場公開はないかもしれない。貴重な機会だった。
物語の舞台はイタリアのローマ、じゃなくて(それだったらROMEか)、メキシコシティ。家政婦の女性を主人公に、1970年代初頭のある一家が描かれる。
物語自体はキュアロン監督の自伝的要素を含むもので、それぞれ激動ではあるがどん!という事件があるわけでもなく、政治的要素はバックグラウンドに置かれる。個人的な感情の機微や、生活描写に重点が置かれている感じがする。「ああ、この時代にこういう暮らしがあったのだな」という追体験をしている感覚。
映像は静謐で、モノクロのせいもあるが、落ち着いた優しさを湛えている。美しい。あと、音。音が非常に立体的だった。音響に凄く凝っている感じがしたので、これご家庭で観るの若干勿体ない気がしてならない...。
極めてシンプルで個人的なストーリーに極上の映像と音響、これぞ映画という体験。映画というものを存分に堪能した。というか、これ、劇場公開すべきだと思う...。
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