「『しかけ』を楽しむ映画です」真実 マツドンさんの映画レビュー(感想・評価)
『しかけ』を楽しむ映画です
是枝監督は、やっぱりくせ者でした。じわじわ、と来る。
和解というベタなストーリーだと、表面をなぞるだけではあまりにもったいない。
あのストーリーで、なぜ劇中劇がなぜSFなのか。サラの再来と評価されるマノンが演じる劇中の母は歳をとらず、娘役のファビエンヌが肉体的には母の歳を追い越す。そんな不思議なストーリーに、深い意味がないはずがない。
サラという存在との関わりの中で、それだけではなくファビエンヌの実母という存在との関わりの中で、是枝監督はおそらく2重に意味を込めたのでしょう。丸1日たってから、気づかされました。
そもそも、母娘の和解だったのでしょうか。和解というより、『赦し』というべきものが描かれていたような…。真実などどこにもなくて、でも、赦すことはできる。是枝監督の深い人間観が、そこには映し出されていたのでしょうか。
残念だったのは、フランス語と英語が混在していたはずの会話の、どこがフランス語で、どこが英語だったのか、後になってみると全く分かっていなかったことです。
リュミエールの夫ハンクの演技を、ファビエンヌがボロ糞にけなす場面、あれはハンクがフランス語を理解していないから、ハンクには伝わっていなかったのでしょうか。そう見せかけておいて、実はハンクはフランス語が理解できないと、演技していただけだったりして・・・。何といっても、執事のリュックですら、「仕事を辞める」という言葉の真実を最後まで明らかにしないのですから。
シャルロットのかわいらしさ、魅力的な音楽、カメラワークの細部、どこをとってもよく行き届いた心配りが感じられました。是枝監督の重層的な作り込みに、感服。
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