「自筆の脚本を手に世界を渡り歩く監督の未来は明るい」真実 MPさんの映画レビュー(感想・評価)
自筆の脚本を手に世界を渡り歩く監督の未来は明るい
フランスを代表する大女優が出版した自伝に綴られた内容の真偽と、彼女と折り合いが悪い娘との関係の真偽が、Wミーニングとなって進んでいく。集まった家族の団欒に寄り添う是枝演出の"人肌"の体温を感じさせる優しく、時に辛辣で、かつユーモラスなタッチは、撮影場所をパリに移しても何ら変わりはない。これは、自筆の脚本を手に演出できる監督の強みとも言える。
目に見えるものから、どうしても撮影の裏側が垣間みえてしまうのは、思いっきりチャレンジングで危険な配役故。それは、すでに発売されている是枝監督自らが綴った撮影日記からも、そして、先日NHKで放送されたドキュメンタリーを見ても分かるのだが、特に、大女優を演じるカトリーヌ・ドリーヴのわがまま放題と、落ち着きのなさ、稀代のチェーンスモーカーぶりは、画面からも伝わってきて興味深い。本人は自分自身と役の間に共通点はさほど多くないとコメントしているが、まるでドヌーヴそのものと感じさせるところが、彼女の、そして、選んだ是枝監督の凄さだと思う。
是枝裕和の次なるチャレンジはハリウッド・デビューと聞く。手元に脚本の草案がある限り、彼の道筋は明るい。そう確信させる「真実」なのだった。
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