「素直になれない母娘の関係。でも重たくない。」真実 yuriさんの映画レビュー(感想・評価)
素直になれない母娘の関係。でも重たくない。
「万引き家族」は疑似家族の話でしたが、こちらは本物の家族なので、実はとっつきやすいです。
大女優のファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、我儘で、人をけなす。常に注目を集めていたい。
その為なら、妹を傷つけ、夫を裏切り、〈母親〉よりも〈女優〉を優先する。
自伝にはウソばかり書いて、娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)にしたら、たまったもんじゃない。
でも、見せたい自分を見せる為なら周囲の犠牲も厭わない女優のエゴは、同時に、相手が求めるものを与えたいという気持ちでもあります。
2人を取り巻く人々の皮肉っぽいやり取りの中には、思いやりも感じます。
ここからは、個人的な話です。
この映画のようにドラマチックでも深刻でもないですが、私は母に褒められたことがありません。
私は機転が利く器用な子供ではなかったですが、中学までは成績も良く、絵や手芸などの課題も丁寧にやってAをもらえました。
でも母は褒めないんです、けなされたり怒られたりの記憶ばっかり(それだけではないけど)。
ある時、「何でお母さんはいつも人を否定する言い方をするの?」と聞くと、「そんなつもりはない。ただの話し方のクセだから」と言われました。
拍子抜けしましたね。私のこの、自分に自信が持てない消極的な性格をどうしてくれるのよ。
また私は、音楽の授業が嫌いで、高校では選択しなかったのですが、歌だけはやりたくて、ヴォーカルレッスンを受けていました。
発表会に母は2度程来ましたが、もちろん褒めてはくれません。やめた時に初めて「もったいない」と言ってくれましたが。
もうこういう人なのだと思って、今はとても仲良しです。
映画では、母の気持ちをわかろうとしなかった娘が詫びると、母は、「あなたとは、今の関係のままで十分」と言います。
観客は中高年の女性ばかりでしたが、若い女性に観て欲しいですね。
作風は、フランス映画らしく、おしゃれで軽いです。
「何回したの?」をうっかり「なにまわしたの?」と読んで「?」となってしまった自分に失笑。