「いつもの是枝節」真実 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
いつもの是枝節
母娘の、ちっちゃな世界の物語で、地味でした。
実のところ、是枝さんって「家族」を通して語ることはあっても、「家族」をメインテーマに描いたことがない監督だと思っていて。
既存の法や制度、倫理、常識で縛られた世の中から、はみ出てしまった人間の悲哀や苦しみを追い、社会を批判する作品が多いのかな、と。
本作は、「個人」の主観や先入観、思い込みの愚かさと、記憶の曖昧さがテーマだったような。
家族全員が「個人」である以上、他の家族が自分に対してどう思っていたかなんてわかりようがないし、記憶なんてあてにならないと、突きつけていた気がしました。
なのに、自分の主観に沿った望む返事が来ないと「私を理解していない」と不平不満に満ちた感情に支配される、という人間の業をあからさまに描いていて。
その不満が一番描きやすいのが、母娘の関係だったのかな、と。
やや否定的に書きましたが、実のところいつもの是枝節を楽しみつつ、主演のカトリーヌ・ドヌーヴの演技力に度肝を抜かれたんですけどね。
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