劇場公開日 2019年10月11日

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「家族コメディ」真実 andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0家族コメディ

2019年10月11日
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鑑賞方法:映画館

今まで観てきた是枝作品はどうもしっくりこなかったが、これは綺麗に嵌った感じがする。
カトリーヌ・ドヌーヴが樹木希林に見えるという話は若干本当だった。というか、ああいう大女優いそうだよね、という。監督インタビューを読むとカトリーヌ・ドヌーヴ自身をかなり反映させているということなので、それはそうか、と納得。
予告が割と深刻みを出しているのが良くないと思う(なんだか以前も是枝作品の予告にダメ出しをした気がする...)が、これは深刻そうに見せたコメディである。重くなりそうでならない。軽快。カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュの化かし合い。ダメ男の道化イーサン・ホーク。そこに加わる純粋なのか強かなのか分からない女の子。登場人物皆まとめて食わせ者。
「そういう世界」で生き残ってきた母親の「強さ」を理解できない娘。ありがちな構図だしまあありがちな物語ではあるが、全員が当たり前のように自分に振られた役割を演じ切っているところが凄い。
誰ひとりとして素直な感情を出さない者たちが、ほんの欠片ずつ自分を見せてゆくさま(特にカトリーヌ・ドヌーヴ)が、安心となぜか緊張を与えている。大女優ってやっぱり孤独なんだな...と思ったり。
多分親子が叫んだり泣いたり、感情を丸ごとぶつける大騒ぎの映画にできたと思うんですが、そういうことをしないのが日本映画っぽいなという気がしました。
あんまり深刻に考えずに人間関係をくすくす笑いながら観るのが向いている映画だと思う。だから予告編はダメです。いや騙そうとしているのか...?
劇中劇の設定が面白すぎた。あれで映画撮って欲しい。
カット割りがやや唐突な感じがしたけれど、それは個人の感覚なのかもしれません。もっとゆったりシーンを切り替える方が良いのかも、と感覚的には思ったけれど、恐らく狙いがあってやっているのだろうな。

andhyphen