「映像から溢れ出るピュアさとみずみずしさ」僕はイエス様が嫌い とえさんの映画レビュー(感想・評価)
映像から溢れ出るピュアさとみずみずしさ
サンセバスチャン映画祭 新人監督賞を受賞した作品。
奥山大史監督は22歳で、これがデビュー作
なるほど、とてもみずみずしい作品だった
小学生のユラは、おじいちゃんが亡くなって、一人になってしまったおばあちゃんと同居するために、お父さんの実家に引っ越してきた
ユラが転校した学校はクリスチャンの学校で、お祈りというものを、ユラはそこで始めて知る
友達が一人もいないユラだったが、やがて、ユラにしか見えない神様が現れ、神様はユラにクラスメートのカズキを紹介する
その物語は
「神様は本当にいるのか」
「お祈りは何のためにするのか」
という、大人でも答えづらい疑問について、小学生の目線で描いている作品
たしかに
悲しいことがあったとき
人は「祈りましょう」と言うけれど
祈っても、どうにもならないことはたくさんあるわけで
それを子供に説明しなければならないとなったら
ますます難しくなる
そんな時、大人たちは
「神に祈りなさい」と言ったとしても
それに従順に従うのではなくて
「僕はイエス様が嫌いです」
と言っても良いと思った
むしろ、それが子供ならではの素直さであって、そうやって彼らは成長していく
窓の外の景色を、障子に穴を開けて覗くように
ユラにとっては、ちょっと大人の世界を覗くような
そんな経験になったのではと思う
面白かったのは、その時、監督は映像を少し斜めにしたこと
それは子供の気持ちをよく表していて
これまで真っ直ぐに見ていた社会を
少し斜めから見るようになったということではないのか
映画を観る前に、出演者たちによる
舞台挨拶があって
登壇した佐伯日菜子さんは「監督は子供の感性をお持ちの方」だと話されていた
この映画を観ていて、その言葉が何度も頭の中で繰り返された
景色が斜めなのも、
障子に穴を開けて外を覗くのも
真っ白な雪の上に残る足跡も
ピュアだからこその映像
その感性で、今後、世界をどう観ていくのかが、とても楽しみな監督だと思った