「子ども騙しのハロウィン映画」ルイスと不思議の時計 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
子ども騙しのハロウィン映画
最近は映像技術の発展も目まぐるしく、それによってアクション映画では「マッド・マックス怒りのデス・ロード」や「ブラックパンサー」のようにオスカーの噂が立つような作品も出てきているし、ファンタジー映画だって今更「ロード・オブ・ザ・リング」を挙げるまでもなく大人が観ても充実感を味わえる作品と言うのはたくさんある。ファミリー向けの映画でも、一緒に行った大人もしっかり感動できる作品が最近は本当に多くなった。だからうっかりしていたのだと思う。本当に子供向けのおもちゃ箱のような映画も当然のように存在するということ。そしてそれをうっかり大人が観てはいけないのだということを、私はついつい忘れてしまっていたようだ。だって女神ケイト・ブランシェット様が出ていらっしゃるんだもの!観ないわけにいかないじゃない!
「おもちゃ箱のような映画」は本来誉め言葉だ。カラフルで可愛らしいおもちゃが次々と飛び出してくるような映画なんて実に楽し気である。でも、おもちゃがただ飛び出してくるだけで楽しいと思えというのは無理な話である。そこには秩序や工夫や演出やストーリーが機能して初めておもちゃ箱を返したような楽しさが生まれるのだと思う。ただこの映画は、流れや展開を無視したようにして、とにかく次から次へとおかしなことが起こってホラー演出でドキッとさせて次の奇天烈なことが起こって・・・という具合にただ闇雲におもちゃを放り投げているだけのようなもの。これではおもちゃ箱のようでもなければ、遊園地のアトラクションを楽しむような気分でさえ楽しめない。物語からホラー演出からギャグから何から何まで、子供向けと言うより「子供だまし」と呼んだ方が相応しい気がするほど。
ジャック・ブラックにこんなぬるい喜劇をやらせるのももったいないし、ケイト・ブランシェット様もあぁ無駄遣い。同じケイトでもケイト・マッキノンだったら気軽なコメディとして楽しめたかもしれないな・・・と思ってひらめいた。下手にキャリアのある大物俳優ではなく、今現在まさにSNLで活躍しているコメディアン達で作ればいい意味で見え方も違って多少の馬鹿馬鹿しさも含めて楽しめたかもしれない。でもそうするとファミリー映画ではなくなってしまうか・・・。
この映画はあくまでも「ハロウィンに家族で観られるファンタジー映画」として存在するだけで、そのジャンルの映画の中で特に素晴らしいものを作ろう、とまではどうやら思われなかったようだ。