「ハリウッドの良き時代を懐かしむには早すぎる。」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド はるさんの映画レビュー(感想・評価)
ハリウッドの良き時代を懐かしむには早すぎる。
落ち目の役者とその世話焼き係りのスタントマンの物語。
映画の撮影所の風景は夏から秋へ変わる時のようにどこか侘しく切なくうら哀しい。この二人の置かれた状況はまさにそんな季節の変わり目のようその付き人に映し出される。ひいき目にみてもB級としか思えない出演作品は像が逆立ちしてしまうほどの出来上がり。にも拘わらず、その当時は大うけに受けた。そんな二律背反に見かけだけは悩む役者にデカプリオ。そして彼の付き人兼スタントマンにブラッド・ピット。更に、疵口には辛子を塗り込めるのが特効薬だと信じて疑わない監督クエンティ・タラティーノ。ホントはこれだけでもう、観る気などさらさらと失くしてしまうはずなのに観てしまい、さらに感動までしてしまった。意味もなく理屈ポイブルース・リーを投げ飛ばすピットに拍手を送り、冷血の主人公と瓜二つに思えるポランスキーなどなど次から次へと過去のエピソードを映しだすのには取り返しの衝かないことをやり続けてきた人間が観ればふぅ~と溜息まじりでろくろく首になってしまいそうだった。人生は下り坂に差し掛かると昔を振り返りながら懐かしさに身をよじるより、自己嫌悪に浸るものなのだ。希望に満ちた日々を送るには生存日数は余りにも短い。しかし、人はそれでも生きるわけで、その礎となるものは、いつでも自分自身のすぐそばにある。
浮き沈みの激しい人生ははたで観ているより辛いものなのだ。
波風の立たぬ人生を送りたいと切に望む人は、この映画、観た方がいいです。
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