「Damn good!」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド viciousさんの映画レビュー(感想・評価)
Damn good!
この作品、リック&クリフ風に言うなら、Damn good!です。
昔々、ハリウッドで…で始まるこの作品、ハリウッドへの懐かしさ、哀しさ、バカバカしさ、全てひっくるめたタランティーノのハリウッド愛が目一杯詰まった作品です。
タランティーノの夢と郷愁を混ぜ込み、あの時代の大きな変化をお伽話のように見せてくれます。
タランティーノはシャロンに生きてて欲しかったんだろうな(とにかくひたすら可愛く描かれているし、襲われるのをリック邸にしたから)、ポランスキーの事はちょっと好きじゃないんだろうな(物凄く遠回しにちょいちょい彼を否定するようなセリフを挟んでるから)、やっぱりウェスタンが好きなんだな、ってのがてんこ盛りです。
今作でも、イングロリアスバスターズのパロディや、数々の有名作品へのオマージュも忘れない。
期待通りのタランティーノ作品です。
そしてメインのリック&クリフ。
全編通して、クリフはひたすらリックを見てる。時には優しく、時にはお父さんみたいに、時には犬のように。
だけど最後、リックがやっとクリフを見る。仕事抜きの目で。親友を。親友として。
この瞬間、男の友情に乾杯したくなります。
クリフの「I try」って返しには、きっと努力しないと友達でいられないような、自制が効かない自分自身への全てが詰まっているようで胸に刺さります。
挑発されたら嬉々として乗り、タイヤをパンクさせた報復だって容赦せず、ラリっててもとことんまでぶちのめす。
そんなクリフのI tryはリックと友達であり続けるための自戒を込めた言葉なのでしょう。オープニングのI try からラストのI try へ美しく繋がり、また明日会おうとリックが言う瞬間、スタンディングオベーションです(笑)
中盤、スパーン牧場で西部劇よろしく現実を生きるクリフと、同じ時間に映画セットの中で西部劇を演じるリックの対比も素晴らしい。
そして新しい時代を背負っていくだろうポランスキーとシャロンのカップルと、斜陽を迎えたリックとクリフの対比。
セリフを覚えるのに必死なリックとパーティに出かけていくシャロン。
常に隠と陽を対比し、それぞれが際立つように作られているのも良かった。
この時代背景を知っていれば物凄く楽しめるし、知らなくても楽しめる、そんな作品なので見て欲しいです。