「10の桁を切り上げて500ページの夢の束」500ページの夢の束 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
10の桁を切り上げて500ページの夢の束
ごめんなさい!細かい事言って。個人的に数字だけはキッチリしとかないと気が済まないもんで。
物語は、最近のキノさんらしい良品だった!
自閉症者のグループホームで生活するウェンディの夢は、手放した家を買い戻し姉であるオードリーと一緒に暮らすこと。ドーナツショップでバイトするウェンディは、決まったスケジュール通りの行動から外れるとパニックを起こしてしまいます。書き留めておかなければ、言われた事も覚える事が出来ません。乳児を抱えるオードリーとの生活は、叶いそうに有りませんでした。
スタートレックの脚本コンテストは、そんなウェンディの夢を叶えてくれる天恵にしか見えませんでした。賞金10万ドル、ストーリーなら毎日空想しているし、素晴らしい脚本をオードリーに読んで貰えたら、私は大丈夫だと信じて貰える。何より、オードリーに伝えたい事がある。
ちょっとしたトラブルからウェンディは自分の手で脚本をロスのパラマウントへ届けようと決意。テンヤワンヤの珍道中は、冷たいバスドライバーやら、小悪党やら、善意が服着てるおばあ様やらに彩られますが、交通事故が行く手を阻みます。病院で目覚めたウェンディは、締め切りを守るために脱出を試みますが、ワンコと大切な脚本の一部を置きざりにするしかありませんでした。
「完璧な書式で印刷された脚本」が要る。絶望感でパニックを引き起こしそうになるウェンディは、stand byと呪文を唱えて頭の中の悪い虫を鎮めます。こんな時は、どうすれば良い?答はスタートレックが教えてくれました。真っ直ぐ前に!目の前には閉店しているコピーサービスがありました。ごみ箱には大量のLetter Sizeの用紙があります。書ける。ウェンディは頭の中で繰り返して来たストーリーを、完璧な書式で書き始めました。
クリンゴン語を話せる警官がロスへ向けて放浪中のウェンディを保護。彼女の行方を捜し続けていたオードーリーとスコッティに引き渡します。ウェンディは一人でパラマウントの中に入り、担当者に脚本を提出しようとしますが「消印のある郵便物しか受け取れない」と却下されてしまい、クレームをつけると、つまみ出されそうになります。
「私が誰だか分ってる?」なおも詰め寄るウェンディ。「いかれてんのか?知るかよ!」
そうでしょうよと、ポストボックスに脚本の入った封筒を投げ込んだウェンディ。悪知恵も人並以上に働くんだから、もう大丈夫!
オードリーの家の前に放置されたピアノは未だ、そこに残っていました。思い出の詰まったピアノはオードリーにとって、見るのもつらいものでした。蓋を開き、鍵盤をたどたどしく押し下げる指はウェンディです。母と子と叔母の三人が、前庭を眺める椅子に座る姿で物語は締められます。オードリーに脚本で伝えたかったことは、言葉にする必要もなくなりました。だって、戻って来たのだから。
宇宙を真っすぐに進んで来た光は、虚空の彼方に消えることなく、帰るべき場所に帰って来ました。
ワンコもね。って、そこ、どなたのお宅っすか???
とにかく、メデタシメデタシ。
美しく成長したダコファニですが、役を選ぶ女優さんになっちゃたんじゃないかと思うのが気になるところでした。と、音楽が西海岸デジタルってのはダメだと思う。Acousticにして欲しかったーーー!ギターでしょ、絶対。