「家族再生の物語」500ページの夢の束 しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
家族再生の物語
主演ダコタ・ファニングの出世作は、知的障害を持つ父の一人娘を演じた「アイ・アム・サム(99年、当時7歳)」。
今度はそのダコタ・ファニングが自閉症スペクトラムの女性を演じる。
原題はPlease Stand By、「スタートレック」の決まり文句の1つだ。
主人公ウェンディは「スタートレック」マニア。「スタートレック」の脚本コンテストに大作を書き上げたものの、郵送では間に合わないことを知り、サンフランシスコからロスアンジェルスのパラマウントスタジオまで持参しようとする。
ロスアンジェルスまでの旅路で彼女は何度もピンチに陥いるが、呪文のようにこのセリフを繰り返して乗り越えていく。
ウェンディが突然いなくなったことを知り、彼女の姉オードリーはロスアンジェルスへ続くフリーウェイを探しに出る。
ウェンディとオードリーは母親に育てられ、母の死後はオードリーがウェンディを見ていた。しかし、オードリーが結婚して妊娠が分かり、オードリーはウェンディを施設に預けた。そしてオードリーは不安からか、赤ちゃんをまだウェンディに会わせていない。
物語の前半、ロスアンジェルスへの旅の前、オードリーが施設にウェンディを訪ねる場面がある。しかし、2人のあいだには前記のわだかまりがあり、再会はうまくいかない。
しかし、ウェンディの失踪はオードリーに大切なものを思い出させた。その頃、ウェンディは幼い頃に姉から教えてもらった曲を口ずさみ、旅を続けていた。
ロスアンジェルスで妹と会えたオードリーは、そこで母が遺した願いに気付く。それは、数少ない家族である姉妹が仲良く生きること。
ゆえにラスト、ウェンディとオードリー、オードリーの赤ちゃんが体を寄せ合う場面は限りなく美しく描かれる。
家族の再生の物語である。
主演のダコタ・ファニングは、難役をチャーミングに演じている。