「ゴジラを応援していた理由」GODZILLA 星を喰う者 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラを応援していた理由
面白かった。オープニングのメトフィエスの語りのところでほぼ面白いことが確定したくらいに期待通りだった。
まあ実を言うと、中盤のメトフィエスがハルオを説き伏せる場面が少々長くてだれたけど前二作と合わせて総合評価で★5にする。
それから、エンドロールのあとにエンディングがあるので観てない人は観たほうがいい。
ギドラが登場しゴジラに噛みついている場面で、マーティンと同じようにゴジラを応援していた自分がいた。「怪獣惑星」ではゴジラとの激闘、「決戦起動増幅都市」でも激闘、そうなればゴジラは倒すべき敵のはずだ。しかし応援していた。そのときはただ不思議だった。
終わったあとに考えてみたら、すごく単純なことだったのに前二作までは気付いていなかっただけだったのだ。
科学技術を誇るビルサルドを象徴する怪獣はメカゴジラ(シティ)で、信仰を大事にするメトフィエスたちを象徴する怪獣はギドラで、スピリチュアルなフツアを象徴する怪獣はモスラだった。
それならば、主人公ハルオを筆頭に私たち観ている者も含めた地球人を象徴する怪獣はなんだ?ゴジラだったんだ。自分たちの代表がゴジラだったのだから応援する気持ちが芽生えるのも当然なのだ。
前二作まで、これは怪獣映画ではないと思っていたけれど、気付いていなかっただけでちゃんと怪獣映画だった。
異人種間の摩擦は形を変えた怪獣バトルで、怪獣同士の戦いは異人種間の代理バトルだった。
神になるために降臨してきたギドラに対して抗う地球人とゴジラ。未来の地球人であるフツアの力を借りて撃退に成功する。
ここでギドラに変わってゴジラが神になるのか?いいや、ならない。
神とは勝者がなるわけではなく、恐れられ讃えられ人々に神と認識されたときになるのだ。
マイナは勝利に固執するハルオに生きることが勝利だと説く、それでもハルオは選択しなければならない。今までの自分を精算するために。
彼の最期の選択は彼の望んだ形ではなかったかもしれないし、ただ負けることを望んだだけかもしれないけれど、地球を自分たちの手に取り返すというハルオの望みは、未来人フツアの価値観を取り込んで結果的には成せたと思う。
そしてギドラでもゴジラでもなく、ゴジラの写し身だったハルオが神になった。
勝利を渇望していたハルオは未来の地球の価値観の中で永遠に『勝ち』続ける。