「概念としての怪獣」GODZILLA 星を喰う者 うむぼんずさんの映画レビュー(感想・評価)
概念としての怪獣
WOWOWにて前情報なしに前二作から続けて鑑賞。
数年でたまーに観直したい。
行き過ぎた文明は破滅をもたらす、などは他の作品でも扱われるテーマだが、本作品においては文明の発展そのものが怪獣=ゴジラを生むための過程にしか過ぎず予定調和であった、という解釈はおもしろい。手塚治虫の『火の鳥』のエピソードとしてありそう。
結局ゴジラも、より高次な存在により喰われてしまうのだが、現代を生きる人類は発展・進歩を常に求めている。文明の発展が結果として滅びに繋がるのであれば、エクシフの教義も理解できなくはない。が、納得はできない。
個人的には、現代社会へのアンチテーゼとして受け取った。
怪獣を怪獣たらしめているのは、人が怪獣を恐れ憎むからであり、憎む人がいなくなれば怪獣は怪獣でなくなる。
ゴジラは災害と同じであって、憎悪の対象ではない、と作中だは言っている。しかし東日本震災や新型コロナが猛威を奮っている世の中、憎んでもどうしようも無いことを憎んでしまう人もいる。
そう簡単に憎悪を忘れることはできないのが人の性だと思うが、本作品でハルオはゴジラへの憎悪から解放されたのは救いでもあり、ゴジラへの勝利にもなっている。
オイカリ様をたてることで恐怖から怒りに変わることを避け、人類はwithゴジラの時代に命を繋いでいく。
かなり賛否両論分かれているようだが、設定や伝えたいであろうことは好みの作品である。
SFとしてみると非常におもしろい。
アニメ映画としてみると、動きが少ないので紙芝居っぽく感じてしまう点が惜しい。
ゴジラとしては、ゴジラ映画の要素は一応満たしているものの、若干の物足りなさを感じる。
あとはメトフィエスが破滅を完全なるものにするために、なぜハルオである必要があったのか、がいまいち分からなかった。ラストではゴジラへの憎しみを持った最後の人間だからハルオなのだろうが、それ以前だとゴジラ憎しの人類はたくさんいそうに感じるが…。
以下、印象的なセリフ。(うろ覚え)
「怪獣を怪獣たらしめているものは何か」
「勝ちとは生き残ること、命をつなぐこと」
「本艦の生命反応はゼロです!」