カランコエの花のレビュー・感想・評価
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あなたを守りたかった
例の授業の辺りからだんだん居心地が悪くなってくる。
「見つかってしまう」という不安と「見つけてほしい」という欲求に挟まれて息苦しくなっていたら唐突に終わり、物凄いエンドロールに入っていた。
みんな少しずつ足りなくて、少しずつ掛け違えていくのが手に取るように分かる。でも誰かを責めることもできない。
下手な授業をしてしまう先生も月乃の困惑も新木の反応と終盤の変化もリアル。
ただあなたを守りたかった、というポスターの一文を思うだけで胸が張り裂けそうになる。
それでも明確な救いをいくつか拾うことができた。
高校生たちの一週間を切り取った作品なので、その前後中にあるたくさんの余白を自分なりに埋めていくのが楽しい。
カランコエの花に似た赤いシュシュが、途端に重くなるシーンがとても好き。
その時の月乃の行動とラストの行動が対になっていてすごく切なくなるんだけど、心情や意味の表現として分かりやすいし何より本当に綺麗だった。
マイノリティ側に分かりやすく感情移入させるのではなく、敢えてマジョリティ側に焦点が絞られているのが新鮮。
観た後たくさんのことを考えずにいられなくなるので、世界に問いかける手段としても良いと思う。
何より、普通の高校生に訪れた変化の時を描いた作品として面白かった。
ほとんどエチュード的に撮影していたらしい。所々たどたどしい部分はあれど、自分がその場にいるような感覚になり、個人的なことをよく考えてしまった。
一応そうだったりそうじゃなかったり、自分をジャンル分け出来ないままでいて、それが一番しっくりくるからまあいいかと思いつつずっと迷っている気もしていて、でもこの映画を観てその後の監督と出演者の話を聞く内に自分を見つけてくれたような、そっと肯定してくれたような気がして気付いたらボロボロ泣いていた。
映画では高校生が主体だけど実際は若者より親世代や祖父母世代の理解を得ることの方が遥かに難しいと思っていて、でもこの映画に関わったことや観たことで気持ちを近くしてくれた人が確かにいることが嬉しい。
個人にとっては自然なことでも、所謂LGBTが少数派であるとこは確かなので、違和感を覚えるのは当たり前だと思う。
人それぞれなのであまり強いことは言えないけど、例えばこの映画をきっかけに少しでも考え方の方向を変えたり心を傾けてくれる人がいたら良いなと思う。
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