「自然と涙が」アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
自然と涙が
今流行の(?)、「実話をもとに」という触れ込みで、ロマンチックに潤色したり、虚構まで史実と信じ込ませるタイプの映画ではない。
リアルで正直な話だと思った。
115分という長くはない尺で、現存する歌手の半生を見事に収めきっている。
地味なストーリーであり、決して涙を流すような“感動的”作品ではない。
にもかかわらず、自分の頬には、自然と涙が落ちていた。
音楽のパワーのせいである。
最高の音楽があれば、余計な潤色など不要だ。
あるがままに語りさえすれば、音楽がその想いを載せて、天駆けてくれるだろう。
最初の方で少年が合唱する
・「行けわが想いよ黄金の翼に乗って」(歌劇「ナブッコ」)
で、既にウルウルしてしまう。ラストでは、
・「誰も寝てはならぬ」(歌劇「トゥーランドット」)
で泣かせてくれた。
公式サイトで、ミュージックリストを見ることができるが、乾杯の歌(歌劇「椿姫」)、「星は光りぬ」(歌劇「トスカ」)、そして「オー・ソレ・ミオ」まである。
シューベルトの「アヴェ・マリア」が結婚式で使われるというのは、意外だった。
選曲は、いわゆる“定番”が半数以上で、目新しいものではない。
しかし、シチュエーションを踏まえた上で音楽が使われている、立派な音楽映画であった。
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