「赤ちゃんと怪物は合わせ鏡」メアリーの総て しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
赤ちゃんと怪物は合わせ鏡
「フランケンシュタインの怪物」を書いたのは僅か18歳の女性だった。
本作は1人の作家、そして作品が生まれるプロセスを丹念に追う。
いわゆる「作家もの」のフォーマットから大きく外れることはない。若き恋と情熱、その後の苦難と不幸。その果てに傑作は描かれた。主人公メアリー・シェリーを演じるのはエル・ファニング。この、作品誕生までの波乱を彼女が演じるのは見応えたっぷり。まさに、いまが旬の女優だろう。
不幸の闇がモンスターを生んだ。しかし、そのモンスターは、実は赤ん坊のまま命を落としたメアリーの子供だ。
早逝したために愛することが出来なかった我が子の代わりに、メアリーは、決して愛されることがないモンスターを生んだのだ。そう、我が子とモンスターは合わせ鏡のように、反転している存在だ。だから我が子は死んで死体となり、モンスターは「死体から生まれた」のだ。
19世紀イギリスの街並み、文豪の館、そして登場人物の服装などは観ていて楽しい。何より、文芸趣味の人にはランプの灯りと羽根ペンがたまらないはずである。
コメントする