劇場公開日 2021年3月26日

  • 予告編を見る

「変化する時代」騙し絵の牙 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5変化する時代

2025年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

脚本の練り込み方が素晴らしいと思った。
2021年現在の巨大出版社「薫風社」は、差し詰め「白い巨塔」という感じだろうか。
創業者という絶対君主の死亡によって起きる権力闘争
彼らの思惑とやってきた新しい編集長ハヤミ
この何を考えているのかまったくわからないおとぼけ編集長によって、薫風社と雑誌トリニティが大きく変化する。
さて、
大御所作家に対するエンピツ つまり編集という第三者による添削の是非
絵画や彫刻など一目でわかるものとは違い、分厚い小説の内容の是非などは誰かさんという権威によって左右されるのは容易に想像がつく。
また、
音楽のように、その奏で方の違いによって心への響き方に違いが出るのは誰もが経験しているが、小説となるとその感じ方はまだまだ人によって大きく好き嫌いが分れてしまうようだ。
編集者のエンピツもまた正しいとは言い切れないだろう。
特に、芥川賞や直木賞などを取った作品が面白いというわけではない。
そこには何らかの新しさなどがあるのだろうが、読み手によってそれはキュビズムのように感じるかもしれない。
この文芸作品に対する文学という言葉が、この世界を権威によってがんじがらめにしているように思う。
音楽のように文楽でいいのではないだろうか?
さて、、
このタイトル 騙し絵の牙
これがこの作品を単に象徴としている点もよかった。
しかし、
大どんでん返しパート1の、ヤシロの小説はカムクラが書いたものだったという点の複雑さとそれを知ったハヤミによる一芝居
ヤシロに対し小説以外の撮影などで嫌気を起こさせ、小説薫風に移動させる道筋を整えていたあたりのハヤミの策略 狡猾さ
まさにタイトル
そのハヤミも最後にタカノに「とんびに油揚げをさらわれる」ことになる。
敏腕編集長も100%ではないし、悔しがることもある。
タカノの視点
小説薫風の在り方への疑問
大御所作家への忖度への疑問
左遷と雑誌部への引き抜き
そこで考えた小説の在り方と雑誌の組み合わせ
この彼女の視点という主軸とその背後で動くヤハミ そして会社の意向
正体を現した社長 そこに仕掛ける大どんでん返しパート1
タカノの視点という主軸がいつの間にかハヤミの思惑に変化する。
ハヤミが最後まで読めなかったタカノの想い。
それが大どんでん返しパート2
そこにある「読者が求める面白いもの」という至極当然の追及
ただ、
フジテレビ問題があるように、彼らの考えた「面白くなければテレビじゃない」というコピーが生んだ「常軌を逸したえげつなさ」
作品は性善説で描かれてはいるものの、「次」を求められる時にその「常軌を逸すること」になってしまうのかなと思ってしまった。
すべてのスピードが極端にアップする時代
変化の波も極端になってきた。
つまり常識や認識や価値観も一緒に変化する。
多くの人がその中で四苦八苦しているのかなあと感じてしまった。

R41